「育てにくいな…と思うけれど、診断はついていない」
「うちの子ちょっと変わってるかも」
「どう接すればいいんだろう」
そんな戸惑いを抱えている親御さんは少なくないでしょう。
発達障害と診断はされないけれど、集団行動や感情のコントロールに困り感を抱えている子どもたちがいます。
「グレーゾーン」と呼ばれていますが、正式な診断名ではなく、発達障害とは認められていません。
しかしグレーゾーンであっても、子ども自身はうまくできないことに苦しんでいる場合があります。
親がどう関わるかによって、子どもの安心感や自信は大きく変わってくるでしょう。
この記事では、グレーゾーンの子どもと日々向き合う中で、家庭で実践できる接し方や声かけの工夫、などについて、わたしの体験談をベースにお伝えします。
わたしが頼っている支援制度やサービスなどの専門機関からアドバイスを受けた方法なども紹介していきますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

グレーゾーンの困りごとは見えづらい

グレーゾーンの子どもは、一見すると発達特性がないように見えることがあります。
「ちょっと手がかかる子」「マイペースな子」と思われがちでしょう。
しかしその裏には、ほかの子には簡単にできることがうまくいかなかったり、感覚が過敏だったり、不安を強く感じていたりすることがあるのです。
わが家のまめも、もともとはグレーゾーンでした。
グレーゾーン最大の困りごとといえば、本人の感じる困り感と周囲からのイメージのギャップだと思います。
本人も「なぜ叱られるのか」「どうすればいいのか」がわからないまま困っていることがあり、それは周囲からわがままに見えたり、だらしないと思われることも。
グレーゾーンの子どもの行動の背景には、実は特性による難しさが隠れている場合もあるのです。
親御さんが、子どもがグレーゾーンだと気づいていない場合、そのことに気づかず厳しく叱り続けてしまうこともあるでしょう。
そうすることで自己肯定感が下がり、かえって行動が悪化することも。
「この子は困っているのかもしれない」
という視点を持つことが、関わり方の第一歩になります。
発達特性を感じないことがある
グレーゾーンの子には、発達特性を感じないことがあります。
まず、グレーゾーンとはどういう状態なのか見てみましょう。

このように、グレーゾーンとは多くのケースで「発達障害の診断領域外」にいることがあります。
まれに「発達障害の診断領域内」にいることがありますが、一部の項目で「領域外」に出てしまっているため、正式に発達障害とは認められないのです。

どの領域にいる子でも、それなりに困りごとを抱えていそうだね…
たとえば、上記の黄色矢印の子に関しては、完全に「発達障害の診断領域外」に出ている状態です。
しかし、発達障害の診断領域内とのボーダーラインに近い状態にいるため、実生活では困りごとがあります。
それが周囲に見えづらいため、そのギャップに苦しんでいる可能性があるでしょう。

わが家のまめが幼稚園児の頃は、ちょうどのこの黄色矢印の状態でした。
「これぐらい許容範囲ですよ」とはいわれたものの、本人や親は困っているので、なかなか支援に辿り着かずもどかしい経験をしました…
定型発達の水準を求められる
グレーゾーンの子は発達特性を感じないとき、定型発達の子どもたちと同じ水準が求められることがあります。
グレーゾーンは確かに発達障害ではありませんが、表面上は発達障害といってもいいほど困りごとを抱えていることがあります。
それが目に見えづらいために、できないことを過剰に低く評価されることもあるでしょう。

本人は限界を突破しているのに、まわりからは「みんなやってるんだから」と言われてしまうのはキツいですよね…
わかりやすいたとえ話でいうと『ドラえもん』に出てくるのび太くんは、発達障害もしくはグレーゾーンのように見えることがあります。
学習が極端に苦手で、忘れものが多く、遅刻癖もあります。
しかし、しずかちゃんや出木杉くんと同じクラスにいることから、通常学級に在籍していることが分かります。
そのため、担任の先生から怒鳴られたり廊下に立たされたりすることが多くありますよね。
バケツを持って廊下に立たされるのび太とジャイアン
また、テストの点数がいつも低く、ママに雷を落とされているシーンも名物です。
0点の答案に毎回激怒するのび太ママ
このような状態が、グレーゾーンの子にとって高い水準を求められている構図に似ているでしょう。

子どもながらに「のび太くんに100点を取れというのは無茶なのでは…?」と思ってはいましたが…
グレーゾーンの子は、一見定型発達の子と同じ水準を目指すべきと思われるかもしれませんが、本人は想像以上に生きづらさ、居心地の悪さを感じていることがあるのです。
\ のび太くんって発達障害?/
工夫して何とかなっていることがある
グレーゾーンの子どもは、正式に発達障害と診断されていなかったり、発達障害の診断領域外にいたりするので、発達障害の子どもよりも特性が弱いことがあります。
そして、自分の困りごとを客観的に理解していることがあります。

「自分ってお友達と違うかも…」ということに、なんとなく気付いたりするのも、グレーゾーンの特徴です

発達特性が弱いからこそ、周囲との違いを感じ取れてしまうんだね…
そのため、周囲との差を埋めようと、自分でなんとか工夫してやり過ごしているケースも多くあります。
そうすることで、本人は周囲になじめているような気になり、困りごとが減ったように思えます。
しかし、それは本人が努力してそうしているだけで、生きづらさや居心地の悪さの根本は変わりません。

自分の意思に反して「みんなみたいにしよう」「普通にしよう」と思いながら生きるのは疲れるよね…
本人が工夫すればするほど、生きやすくなっているように見えて、どんどん特性は隠れ、困り感に気付いてもらえなくなっていくのですね。
調子が良いときと悪いときがある
グレーゾーンの子どもは、調子が良いときと悪いときの差があるのも困りごとの1つです。
そのため「昨日はできたのだから、甘えているだけ」「前回はできたのだから、努力が足りないだけ」と判断されることがあります。
しかし、実際にグレーゾーンの子どもは、脳のエネルギー配分にムラがあると考えられます。
発達特性により、見えないところで過剰に頑張っていることが多くあり、疲れが溜まりやすいのです。

特に自分の興味があることに全力投入しすぎて、勉強に身が入らない…という配分が、努力不足のように映ってしまうのかもね
また「今日は耐えられる」「今日は無理」の日があるのも特徴の1つで、そもそもこういうムラがあること自体がグレーゾーンの特性なのです。
そのため、グレーゾーンの傾向にある子が「できた」日というのは、たまたま調子が良かっただけだと考えるのが自然でしょう。

「できた日」を基準にしてしまうと、ほかの日が全部「何でできないの?」になってしまい、自信喪失の原因にも…
グレーゾーンの子は、自分でも「昨日はできたのにおかしいな…」と気づくことがあります。
それで自己肯定感が下がってしまってはいけませんので、調子の平均値で見てあげることが、安定した支援につなげるポイントです。
努力不足やわがままだと思われる
グレーゾーンの子は厳密に発達障害ではないことや、周囲からも「発達障害ではない子と同じ水準でできる」と思われていることが多いと思います。
それゆえ、調子が悪いと「努力不足」「わがままを言っている」と思われることがあるでしょう。
実際には本当に調子が悪かったり、気分にムラがあること自体がその子の特性だったりするのに、それを欠点として認識されてしまうのは不利ですよね。
実際にグレーゾーンの子は、ワーキングメモリ(学習したことを覚えておく能力)が低く、一度学習したことを長く記憶していられないことがあったり、特定の学習に困難を感じていたりすることがあります。
ASD(自閉スペクトラム症)のグレーゾーンの子はこだわりが強く、わがままではないけれど特定の条件下でないと行動できない子もいます。
発達障害とみとめられていない上に、周囲からも発達障害だと思われていないだけに、できないことに注目されやすく、本人の性格に問題があると判断されてしまいがちなのですね。
グレーゾーンの子どもへの接し方

グレーゾーンの子どもと関わる上で何より大切なのは、安心感を持てる関係性をつくることです。
グレーゾーンの子は、言葉で説明されても理解が難しいことがあります。
以下のような工夫が有効でしょう。

実際にわが家でしていたことや、幼稚園・学校にお願いしていた合理的配慮の1つです
たとえば予定が変更されることにストレスを感じやすい子には、出かける前にスケジュールをイラストや文字で伝えることから始めてみましょう。
急に変更を知るとパニックを起こしやすいですが、事前に柔らかく伝えておくことでストレスを防ぎやすくなります。
また感情が爆発しやすい子には、落ち着くまでそっと待つ、刺激を減らすといった対応が効果的です。
ご家庭でできることは親御さんが意識してみて、園や学校にお願いできそうなことは相談してみてくださいね。
「できない」の裏に何があるか探ってみよう
「なぜできないの?」ではなく「どうすればできるようになるか」という視点をもって関わることで、子どもは自分らしく行動できるようになるでしょう。
グレーゾーンの子どもは、わかっているのにやらなかったり、サボっていたりするのではなく、わかっていないからできないことが多いといわれています。
それを大人が誤解し、繰り返し叱ってしまうことがよくあります。
そうすると子どもは「どうせ怒られる」「何をしてもダメ」と感じ、自己肯定感を失ってしまうかもしれません。
叱る前に「この子はこれを本当に理解しているだろうか」「この子にとって分かることだろうか」と、一度立ち止まって考える習慣を持ってみましょう。
それだけでも、親御さんが一瞬冷静になれる時間を持つことができ、対応が変わったり関係性が好転したりするかもしれません。
また叱る必要があるときも、感情で怒るのではなく、次にどうすればいいかをわかりやすく伝えるようにしましょう。
失敗や問題行動は、グレーゾーンの子にとって学びのチャンスです。
本人が次につなげられるようサポートする意識が、子どもの成長を支える基盤になるでしょう。
簡単なことから始めてみると気づきがある
グレーゾーンの子どもに家庭でできるサポート方法は、意外にも「超基本的なこと」ばかりです。
正直、わたしは「もう○歳なのにこんなこともサポートしなきゃいけないのか…」と、ため息をつくこともありました。
それぐらい、親御さんが普段「これは1人でできて当たり前」と思っているようなことを、サポート内容に組み込むというイメージです。
たとえば朝起きてすること(着替える、顔を洗う、朝ご飯を食べる、など)を「やることリスト」で見える化して、壁に貼っておく。
朝起きてすることがたった2~3つしかなくても、グレーゾーンの子にとっては覚えられない量である可能性があります。
見える化しておくことで、自分で何をするのか気づきやすくなりますね。
それが続くと「自分で気づいて身支度ができている」という自信につながります。

幼稚園の頃は、自分で支度ができたらシールをもらっていたよ!
シールが溜まっていくのが嬉しくて、自分で支度をがんばるようになった◎
また、自己肯定感が下がることを懸念している場合には、夜寝る前に「今日がんばったこと」「今日よくできたこと」などを3つ教えてもらうという時間をもうけるのもおすすめです。
子どもが自分の1日を振り返り「今日はこれがよくできた」と自覚していることが何なのか親御さんにも伝わって、子どもが過ごした一日や心境を、より深く理解する機会にもなるでしょう。
また、子どもの感情コントロールに悩んでいるご家庭では、子どもがイライラしたときに逃げられる場所を用意してあげるのも効果的です。
お気に入りのクッションや別部屋を用意し「怒りたくなったらここに来て気持ちを落ち着かせてね」と事前に教えておきます。
子どもの感情が爆発したとき「ここにいれば安心できる」という空間があるだけで、子どもが自分で気持ちを落ち着かせることに役立ちます。

わが家では、イライラしたときに「これをやってストレス解消するぜ!」という行動を一緒に決めました。
まめは「お絵描き」と答えたので、感情が爆発したときには部屋にこもってお絵描きをしてもらうことにしました
家庭の中で「この子にとってのやりやすさ」を一緒に見つけていくプロセスそのものが、信頼関係を築く大きなきっかけになるでしょう。
まとめ
グレーゾーンの子どもにとって、接し方ひとつで安心感や自信は大きく変わります。
正解がひとつではないからこそ、うまくいかないときは方法を変えてみるという柔軟な姿勢を持ってみましょう。
それが、親にとっても子どもにとっても心を軽くするきっかけになります。
大切なのは診断の有無ではありません。
なぜなら、グレーゾーンという特殊な状態を見てもらうとわかるように、診断があってもなくても困っている子どもはたくさんいるからです。
どうすれば子どもが楽に過ごせるかを一緒に考えることで、グレーゾーンの子の生きやすさや考え方が良い方向に変わっていくでしょう。
親も子もストレスを溜めすぎないよう、柔軟な方向に考える癖をつけ、家庭にとっての最適解を見つけられると良いですね。
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