発達障害の診断は出ていないものの、集団生活で困りごとを抱えやすい「グレーゾーン」の子どもたち。
彼らは、学校生活の中で見えにくい生きづらさを抱えています。
特に問題になりやすいのが、いじめとの関係です。
周囲からは「少し変わった子」「空気が読めない子」という印象を持たれやすく、本人に悪意がなくても誤解が生じやすいからです。
わが家の息子・まめも長らくグレーゾーンと判断されてきました。
この記事では、グレーゾーンの子どもがなぜいじめの対象になりやすいのか、その背景やサイン、家庭や学校でできる具体的な対策について、経験談をもとに解説していきます。

グレーゾーンの子どもとは?

グレーゾーンとは、発達障害の診断基準には明確に当てはまらないものの、発達特性による困難さがみられる状態を指します。
診断名がないため支援につながりにくく、周囲がその子の「努力不足」や「性格の問題」と捉えてしまいやすい点が特徴です。
本人も悪気はありませんし、なぜ自分ができないのか、なぜ怒られてしまうのか分からず、生きづらさを抱える原因になります。
グレーゾーンについてはこちらでくわしく解説していますので、読んでみてくださいね。
グレーゾーンは発達障害とどう違う?
発達障害とグレーゾーンの大きな違いは、医学的な診断の有無にあります。
- 発達障害:発達検査をして「発達障害」という結果が出て、医師に診断されている
- グレーゾーン:発達検査で「発達障害」という結果が出ず、医師に診断されていない

つまり、医師に診断されていれば発達障害。されていないけれど特性がみられる場合にはグレーゾーンとなります
医師から診断されていないだけで、注意の向きにくさや対人関係のぎこちなさなど、みられる特性自体は、発達障害と似通っていることがよくあります。
そのため、日常生活での困りごとは発達障害のある子どもと同程度であるにもかかわらず、支援制度の対象外になってしまうケースもあるのです。

なぜ特性は似通っているのに、診断をしてもらえないの?

実は発達検査にはいくつか項目があって、そのうち全てを満たさなければ発達障害とは診断してもらえないんです
\ つまり、こういうこと!/


診断項目の1つを満たしていても、9割満たしていても、どちらも同じグレーゾーンなの!?

そうなんです、9割満たしていればほぼ発達障害だし、1つしか満たしていなければ定型発達に近いはずなのに、形式上は同じ「グレーゾーン」になるんです
そのため、グレーゾーンの子どもというのは案外たくさんいることになるんですよ。

グレーゾーンの困りごとは見えにくい
グレーゾーンの子どもは、授業についていけないほどではないものの、板書が遅れたり、指示を聞き漏らしてしまったり、細かい困りごとを抱えていることがあります。
これらは、1つひとつが些細に見えるため、大人から見過ごされやすく、支援の対象外になったり、そもそも「これぐらいで支援は必要ないだろう」と判断されたりします。
その結果、グレーゾーンの子ども本人だけが、強い疲労感や失敗体験を積み重ねていくことになるのです。
この積み重ねが自己肯定感の低下につながり、対人関係に影響を及ぼしたり、二次障害(※1)につながったりします。
※1…二次障害とは、発達障害の特性による生きづらさや失敗体験が原因で、後天的に引き起こされるうつ病や不登校、引きこもり、暴言・暴力などの精神的・行動上の問題をいいます。

グレーゾーンの子どもは困りごとを抱えているけど、本当に気にかけられたり問題視されたりするのは「診断されている子ども」だから、対応が後回しにされがちなんです

それでいじめにつながっても、気付かれないことがあるのか…
グレーゾーンの子どもがされやすい誤解
グレーゾーンの子どもが感じる生きづらさは、周囲からの誤解にあります。
グレーゾーンの子どもは「できないのに、できると思われてしまう」のです。
本当は発達障害の子どもと同じだけの困り感を抱えているのに、周囲からそう見えない、なにより医師に診断されていないことで
発達障害と診断されていないなら、定型発達ってことでしょ?
それなら、まわりの子と同じようにできるでしょ?
というかたちの誤解をされてしまうことがよくあります。
しかし、できない。もしくはできるときとできないときの差が大きいんです。
そのため、周囲からは「やればできるのにやらない」「わざとふざけている」と誤解されやすいのですね。
その結果、注意や叱責を受けやすくなり、クラス内で浮いた存在になってしまうことも。
こうした誤解の積み重ねが、いじめの温床になることもあるでしょう。
グレーゾーンといじめの関係

グレーゾーンの子どもはいじめの被害者にも、そして加害者にもなり得る立場にあります。
本人に悪意がなくても、特性ゆえの行動が周囲との摩擦を生みやすく、いじめという形で表面化することがあるのです。

被害者だけでなく、加害者にもなることがあるの…?

グレーゾーンだからこそ、無自覚のうちにいじめの加害者になってしまうこともあります
いじめの「被害者」になりやすいケース
グレーゾーンの子どもは、空気を読むことが苦手だったり、冗談を真に受けてしまったりする特性があります。
すると、年齢の低い子どもはからかいがエスカレートしやすくなるでしょう。
最初は軽い悪ふざけだったものが、リアクションを面白がられ、継続的ないじめへと発展するケースもあります。
本人がはっきり「嫌だ」と伝えられないことも、被害が長期化する一因になりやすいんです。

本人がヘルプサインを出せるようにするのも、わたしたちができるかかわり方の1つですね
ヘルプサイン(援助要求)とは?
ヘルプサインとは「助けてほしい」「教えてほしい」という、周囲にヘルプ(助け)を求めるアウトプットのことです。とくに言葉でヘルプサインを出せることが理想とされ、できるようになると、子ども自身の生きやすさにつながります。
わが家の場合、まめは学校でヘルプサインを出すのが苦手です。
もともと穏やかで口数の少ない性格である上に「人に助けを求めたくない」「自分でできる」というプライドもある子で、あまり人を頼ろうとしません。
そのため、できていないことでも「やってみればできるかもしれない」と、ヘルプサインを出さずに何とかしようとし、最終的に何もおわらず先生に怒られる…
というケースがよくあります。
そして、人間関係に関しても悩みやトラブルをなかなか家で話してくれず、何を聞いても「大丈夫だよ」「楽しかったよ」しか答えてくれません。

でも親としては、まめが本当に何事もなく学校生活を終えているとは思わないし、実際あとから「実はこういうことが起きていた」と発覚することもあって、いつもヒヤヒヤしているんです…
コミュニケーション力の弱さは、グレーゾーンや発達障害(ASD・ADHDなど)をもつ子にとって課題の1つ。
コミュニケーション力の欠如によって、グレーゾーンの特性がより印象深く伝わってしまい、いじめに発展することも考えられますから、親としては常にようすを窺いたいですね。
いじめの「加害者」になりやすいケース
グレーゾーンの子どもは、無自覚のうちにいじめの「加害者」になってしまうこともあります。
これは、グレーゾーンの子どもが「相手の気持ちを想像すること」が難しいという理由です。
悪意なく、意図せず相手を傷つける言動をしてしまうこともあるのです。
その結果、周囲から反感を買い、トラブルメーカーというレッテルを貼られてしまうこともあるでしょう。

発達特性の強いグレーゾーンの子は、そのシチュエーションで自分がどのような状況におかれているのか、何をどうすべきなのかがわからないことがあります。
たとえば、自分の言動が間違っていると自覚していても「ではどうすればよかったのか」という最適解まではわからないのです。

自分の言動が間違っているところまで分かっているなら「どうすればよかったのか」も理解しているだろうと思ってしまいがち…

そこがまさにグレーゾーンですよね。
そこまでは分かってるんです。でもその先がわからない。
だから周囲から反省を促されて、よくわからないまま「失敗体験」として積み重なってしまうんですね
たとえ「なんでこんなことをしたの?」と冷静に聞いたとしても、グレーゾーンの子は「またやってしまった」「責められている」と感じやすいんです。
それがきっかけでますます心を閉ざし、いじめをしてしまう原因がさらに奥深くに沈んでしまう…というケースもあるでしょう。
グレーゾーンの子に対しても適切な支援やかかわり方をすることで、もともとその子が持っている「自制心」や「協調性」を引き出すことができます。
グレーゾーンの特性を理解し、肯定的にとらえた上で支援につなげることで、いじめの加害を防ぐ近道になるかもしれません。
発達障害やグレーゾーンというのは病気ではないため「治る」ことはありませんが、適切にかかわれば特性の出方をゆるめることができ、逆に対応を誤ると問題行動が悪化する可能性もあるんです
グレーゾーンのいじめは気づかれにくい
グレーゾーンの子どもに関するいじめは、表立った暴力や暴言ではなく、無視や仲間外れといった形で起こることが多いようです。
そのため、教師や保護者が問題に気づいたときには、すでに深刻化していることも。
診断されていないことで、支援の優先度や重要度が下がってしまう点も課題なんです。
また本人が明確に意思表示できなかったり、コミュニケーション力が低かったりすることも、発覚を遅らせる要因になっています。
特に、思春期になると集団の人間関係トラブルが多くなってきます。
思春期の子どもの対応というと、
- 親が何を言っても聞かない
- 反抗ばかりしてくる
- 何を言っても無意味だからしばらく好きにさせておく
という対応をとるご家庭もあるかもしれません。
しかし、グレーゾーンの子に対してはもう少し、親御さんがかかわることが推奨されています。
過度に干渉するのではなく、注意深く子どもの様子を観察し、適切な対応もしくは支援の方法を常に考えるということです。
いじめのサインや影響について

いじめは、子どもの心身に大きな影響を及ぼします。
さらにグレーゾーンの子どもは、それを言葉で訴えることが苦手な場合があります。
そのため、周囲の大人が変化に気づくことがなによりも重要です。

特に小学校高学年くらいになると、学校であったことを親に話さなくなることも増えてくるので、より注意深く観察したいですね
メンタルの変化や影響
子どもが、以前は楽しんでいた学校の話題を避けるようになったり、自分を否定するような発言が増えたりしたら、注意深く見ていきましょう。
思春期にさしかかれば、学校の話題を避けたり親御さんとの会話が少なくなるのは自然なことですが、もしかすると強いストレスを抱えているかもしれません。
グレーゾーンの子どもは、感情の整理が難しいことも多くあります。
不安や恐怖を内側に溜め込み、どう発散していけばいいかわからないからです。
その結果、不登校や引きこもり(二次障害)につながることもあります。
行動や身体にあらわれる影響
いじめを受けている場合、子どもの行動や身体にも変化があらわれることがあります。
たとえば、朝学校に行く時間になる体調不良を訴えたり、夜眠れなくなったりするのは典型的なサインでしょう。
また、急に甘えが強くなるなどの変化がみられたら、ストレスが蓄積していると疑ってみてもよいかもしれません。
これらは、心の不調が身体症状として現れているサインであり、単なる体調不良として見過ごさないことが大切です。

別のパターンでは、暴言や暴力という形で表出することもあります。
暴言や暴力になってしまうのは二次障害の1つであり、適切な行動ではありませんよね。
しかし、本当はヘルプサインを出したいのにそれができず、暴言や暴力としてしか表現できないケースもあるのです。
「乱暴な子になってしまった」「危険な子に育ってしまった」というわけではありません!
いじめに直接は関係しないかもしれませんが、スマホで自由に動画を見せている場合には、悪影響のある動画などでいじめ・暴言・暴力の描写を目にする可能性があります。
グレーゾーンの子は「動画の中の人がやっていたから、やってもいいんだ」「自分もやってみよう」という軽いノリで、いじめにつながる行動をしてしまうことも。
善悪の判断が難しいことがありますので、このような動画にも注意したいですね。

影響が長期化することも
いじめ体験が長期化すると、人間関係への不信感や強い自己否定感が形成されやすくなります。
特にグレーゾーンの子どもは「自分が悪いからいじめられる」と考えやすく、どんどん自尊心が削られてしまうでしょう。
そして、将来的な対人不安やうつ状態につながるリスクも指摘されています。
とくに、中学生になってもかんしゃくや暴言・暴力などいわゆる「問題行動」が改善しない場合には注意が必要。
これまでヘルプサインを出すことができなかったり、感情をコントロールできなかったりしたことが原因と考えられているからです。
いじめの影響が長期化しないように、ヘルプサインを出す支援をしたり、二次障害に対して適切な対応をしたり、今できることから始めたいですね。
家庭と学校でできる対策とは

グレーゾーンの子どもをいじめから守るためには、家庭と学校が連携し、早期に対応することが必要です。
ここからは、家庭と学校それぞれでできるかかわり方や連携方法について、ご紹介します。
家庭でできるかかわり方
家庭では、子どもの話を「評価」せずにただ受け止める姿勢が重要です。
こまかな事実確認をしたり、正論を急いだりするよりも、まずは「つらかったね」と感情に寄り添ってあげましょう。
そうすると、子どもは安心して気持ちを表現できるようになるでしょう。
その安心感が、問題解決への第一歩になるかもしれません。

グレーゾーンの子どもは、いじめの事実を親御さんに話したり、順序だてて説明したりするのが得意ではありません。
それに本人が気づいていることもありますし、いじめの事実を家族に知られたくないと思っている場合もありますから、なるべく話しやすい空気を作ってあげることが重要なんですね。
学校との連携方法
グレーゾーンの子どもがいじめに関与している(加害者でも被害者でも)と気づいたら、担任の先生やスクールカウンセラーに早めに相談しましょう。
特にグレーゾーンで診断がついていない場合は、先生やスクールカウンセラーが子どもの特性を認識していない可能性があります。
その場合は、まずグレーゾーンの特性があると共有することから始めましょう。
診断がついていなくても、特性への配慮は可能。
座席の配置を変えたり声かけを工夫するなど、環境を調整することによって状況が改善することもありますよ。
支援につなげるのも手
家庭や学校でできる配慮や連携の仕方もありますが、必要に応じて、外部支援の力を借りるのも手です。
発達相談窓口や医療機関、民間の支援機関を利用することも、選択肢に入れておきましょう。
第三者が関わることで、家庭や学校だけでは気づけなかった視点が得られます。
また、家庭でも学校でも叶わなかった「子どもに合う支援方針」が見えてくることもありますよ。

家庭はその子のことをいちばんよく分かっていますし、学校ではその子の学習や日常生活、人間関係などをよく見ています。
しかし、家庭も学校も「子どもの発達に関してのプロフェッショナル」ではありません。
つまり、家庭と学校ではグレーゾーンの子に適した対応を完璧にはできない、と思っておいたほうがよいのです。

実際に幼稚園や学校に通ってみると気づくのですが、先生方は「教育のプロ」であり、発達についてはほとんど知見がありません。そのため、最悪の場合学校で間違った対応をされている可能性もあるんです
グレーゾーンの程度にもよりますが、家庭と学校での対応だけでは不十分な場合、外部支援を活用することがベストであるケースもありますよ。
グレーゾーンの子どもが安心して育つために

いじめを防ぐことはもちろんですが、グレーゾーンの子どもが自分らしく、安心して成長できる環境づくりが何よりも大切です。
自己肯定感を育てる意識をしよう
グレーゾーンの子どもが安心して育つためには、できないことを補うだけでなく、得意なことや努力している点に目を向けることが大切です。
自信を持つことで、子どもは「自分にも価値がある」と感じられるようになります。
この積み重ねが、いじめに対する心理的な耐性にもつながるでしょう。
もちろん、自己肯定感が高ければいじめられても大丈夫というわけではありません。
しかし、自己肯定感が上がるとともに、他者からされて嫌なことを「やめて」と伝えられるようになったり、逆に人からされて嫌なことを誰かにするという行動を回避できることがあります。

自己肯定感とは、どんなときも自分に自信をもって堂々と生きるということではありません。
ありのままの自分を肯定し、価値ある存在だと認められる感覚のことをいいます。
長所も短所も含めて自分を受け入れ、ポジティブにものごとを捉えられるようになれば、健全な人間関係を築ける第一歩となるでしょう。
周囲に多様性を持ってもらおう
グレーゾーンの子どもがいじめの加害者・被害者にならないためには、周囲の理解も必要です。
クラスや家庭内で、多様性を尊重する価値観を共有することができれば、いじめの予防にも直結するでしょう。
「1人ひとり違っていて当たり前」というメッセージを、大人が日常的に示すことが重要です。
家庭内できょうだいがいる場合には親御さんが、学校やクラスでは先生がその役目を担うでしょう。
いじめは学校や習いごとなど、同年代の友だちが集う場所で起こりやすいため、その指導者が責任をもって周知することが大切です。

その環境にいる大人の方(指導者など)に、特性のことを話しておくといいかも
将来を見据えた支援につなげよう
グレーゾーンでも発達障害でも、子どもの成長とともに困りごとは変化します。
定期的に状況を振り返り、必要に応じて支援の形を見直すことが大切ですよ。
長期的な安心感を保つことができれば、少し先までの見通しを立てられて、親御さんの安堵にもつながりますね。

グレーゾーンである=将来の可能性が狭まるというわけではありません。
子どもの年齢が小さいと「このままどうなってしまうのだろう」と、不安な気持ちが押し寄せることがあるかもしれません。
しかし、グレーゾーンにはグレーゾーンの明るい道が、発達障害には発達障害の明るい道があります。
どこかで頭打ちになってしまうことはなく、必ず生きやすい道が見つかりますから、長期的な支援とともに、マイペースに乗り越えていきましょう!
まとめ
グレーゾーンの子どもは、いじめのリスクを抱えやすい一方で、適切な理解と支援があれば安心して成長できる力を持っています。
診断の有無にとらわれず、子どもの困りごとに目を向け、家庭と学校、そして社会全体で支えることが大切ですね。
なにごとにおいても早めに気づくこと、そしてすぐに対応することが、子どもの未来を大きく左右します。
子どもの様子に目を向けたり、学校と連携したりして、一緒に生きやすい道や方法を見つけていきましょう。


















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