「発達障害とは診断されていないけれど、なんだか育てにくい」
「園や学校で、ちょっと他の子と違う気がする」
そんな違和感を感じながら子育てをしている方は少なくありません。
発達障害とまでは診断されないものの、特性や傾向が見られる状態は「グレーゾーン」と呼ばれ、支援の対象かどうか判断が難しいケースとして扱われます。
この記事では、発達グレーゾーンの子どもに見られやすい特徴について、さまざまな観点から整理しててお伝えします。
親が気づきやすい日常のサインや、対応のヒントについても、わが家の体験談をシェアしますので、ぜひ参考にしてみてください。

グレーゾーンってどんな子ども?

グレーゾーンとは、発達障害の診断基準を完全には満たさないけれど、日常生活や集団生活の中で特性による困りごとが目立つ子どものことを指します。
医師から「経過観察」と言われたり「はっきりとは診断できないけれど気になる点がある」と言われたりすることもあります。
特徴が軽度であったり、家庭では育てにくさを感じるのに園や学校では問題が目立たなかったりすることもあり、支援につながりにくいという難しさがあるのが実情。
診断がないために周囲の理解を得にくく、親だけが「なぜこんなに大変なんだろう」と孤立感を抱えてしまうこともあるでしょう。

「診断がつかなくてよかったじゃん!」と言われることもありましたが、実際にグレーっ子を育てていると、そういう問題でもないんですよね…
グレーゾーンの子どもの特徴

グレーゾーンの子どもは一見、発達特性がないように見えることも多く、特徴が分かりづらいのがトリッキーなところです。
しかし、日常生活の中でよく観察してみると、いくつか共通する傾向が見られます。
まず、グレーゾーンの子どもがどの位置にいるのかを見てみましょう。

中央のラインより右にいれば発達障害と診断され、左にいれば診断されません。
グレーゾーンは、上記3つの矢印すべてが該当します。

えっ!?それなら、下2つの矢印は「診断領域内」に入ってるから、発達障害と診断されるのでは?

それがトリッキーなところで…
矢印すべてが「診断領域内」に収まっていなければ、診断はつかないんです

本当だ、一部が「診断領域外」に飛び出てるね
これが、グレーゾーンです。
3つの矢印を見ていただけると分かるように、グレーゾーンは限りなく発達障害に近い場所にあります。
グラフにすると発達障害には入らないとされますが、実生活では発達障害と同じくらいの困りごとを抱えていることが多くあるんです。
そのため、グレーゾーンの子どもがどのような特徴を持っているかといえば、ほぼ「発達障害の特徴」と同じだと思って良いでしょう。
その中でも「ではなぜ発達障害と診断されないのか?」「具体的にどう違うのか?」を切り口に、グレーゾーンの特徴を見てみましょう。
状況や相手によって行動にムラがある
グレーゾーンの子どもは、状況や相手、過ごす場所によって行動にムラがあることが特徴です。
家庭では落ち着いて過ごせるのに学校では問題行動があったり、その逆だったり、場面によって行動の安定度が異なることがあります。
これは、刺激への感受性の高さや、変化への対応力の弱さなどが影響しています。
大人から見ると「わがままな子」「甘えている」と誤解されがちですが、発達障害の一歩手前(=グレーゾーン)にいる可能性も高いのが現状です。
状況や相手、場所によって行動が違うため、たまたま発達検査を受けたときに調子が良いと「診断領域外」になることもあれば、再度受けて診断がつくこともあるでしょう。

「今回たまたま調子が良くて診断がつかなかった」って、意外とよくあるケースなんですよ
わが家のまめ(小4)は、現在ASDと知的障害という診断が確定しています。
しかし、これまでさまざまな発達検査を受けてきて「今回たまたま診断がつかない」という状況に何度も遭遇してきました。
幼稚園のときには、グレーゾーンの診断もされています。
親としては「明らかに健常児ではない」「ほかのお友達と違う行動をするし、先生からも指摘されている」という根拠(?)がありましたが、それでも専門家の先生からは

これでは発達障害とはいえません。個性の範囲です。
と言われてしまいました。
その結果「様子見」というグレーゾーン診断となり、小学校入学時も通常級に通わせることになったのでした。
今思えば、検査を受けたときにまめの調子が良かったのかもしれません。
何度も繰り返し検査を受けてみれば、そのうち1回くらいは診断がついていたかもしれません。
でも、発達障害の可能性のある子どもを育てる毎日(さらに乳幼児あり)に疲れ果てていたわたしには、そこまでする気力がありませんでした。
まさにグレーゾーンの困りごとを、全身で受け止めたようなできごとでした。
集団行動や対人関係に苦手さがある
グレーゾーンの子どもには、空気を読むのが苦手だったり、自分の興味のある話ばかりをしてしまったりと、同年代の子とスムーズな関わりが難しいことがあります。
友達関係が一方通行になったり、遊びに入れなかったりして孤立してしまい、次第に対人関係に苦手意識を持つ子もいるかもしれません。
また、対人関係だけでなくクラスやグループの集団活動においても、グレーゾーンの子どもは以下のように、独特の行動を見せることがあります。
集団行動や対人関係が苦手なのは、本人には悪気がないことが多く、むしろ本人も「なぜ自分は友達ができないのだろう」と悩んでしまうことも。
しかし、無意識のうちに迷惑をかけていたり、お友達を困惑させる行動をしたりして、トラブルの要因にもなるのが実情です。
もちろん人間ですから、いろんな友達と合う・合わないがあるでしょう。
特定の子とだけ仲が良いこともありますし、1人で過ごすほうが好きな子もいます。
しかし、子どもがグレーゾーンと言われたことがある身としては「集団から浮いている」と感じた場合、グレーゾーンや発達障害(軽度も含む)を疑ってみるのも手かな、と感じます。

もちろん、集団から浮く=悪いことではありません。
その子の感性が周囲と違って、それは恵まれたものかもしれない。
でも、集団から浮いていて生活しづらいのであれば、その子に合った環境を整えてあげることができるので、まず気づくことが大事だと思います!
不注意や感情のコントロールが苦手
グレーゾーンの子どもには、注意力や情緒のコントロールに関する困難がみられます。
たとえば、以下のようなものです。
先生の話を座って聞いている場面で立ち歩いてしまったり、授業中に教室から飛び出てしまったり、問題行動がみられるかもしれません。
本人は自由気ままに行動しているように見えたり、マイペースで周囲を見ていないように感じられますが、実は本人も気にしていることが多くあります。

わがままや自分勝手ではなく、発達特性(脳機能の障害)による行動なので、本人も「本当はじっと座っていたい…」と感じていることがあるんです

自分の意に反した行動なら、一番つらいのは本人だね
本人も気にしていて「なぜ自分だけうまくやれないんだろう」と感じている可能性があるので、その失敗が続くと、自己肯定感の低下につながるリスクがあります。
さらにグレーゾーンの場合は診断がついておらず「発達障害」とはみとめられていないため、周囲の大人も厳しくしてしまいがち。
しかし、グレーゾーンの子ども本人は発達障害と同じくらいの困り感を感じていることがあるので、このギャップがグレーゾーンのつらいところなんです。
グレーゾーンかも?日常のサインとは

グレーゾーンの特性がある子どもにいち早く気づいてあげられれば、本人が生きやすい環境を整えたり、より自信を持てる工夫ができたりしますね。
日常的に子どもと接する大人(親御さんや先生)が、生活の中でグレーゾーンの特性に気付けるサインを解説します。
注意深く見ていれば、グレーゾーンの子どもはやや変わった行動を見せることがありますので、参考にしてみてください。
先生に怒られることが多い
必ずそうであるとは限りませんが、グレーゾーンの子どもは先生に怒られることが多い傾向にあります。
発達障害だと学校側に伝わっていれば、それ相応の対応をしてもらえるため、もしかすると怒られる回数が少ないかもしれません。
しかし、グレーゾーンだと先生や学校側が「発達障害」と認識していない可能性が高く、健常児の子どもと同じように接するでしょう。
そうすると、発達特性をもつグレーゾーンの子どもはルールに対応しきれず、怒られる回数が増える可能性があります。
先生にもよりますが、先生が怒るということは、それなりに問題行動や危険な行動などをしていると考えるのが自然でしょう。
そういったトラブルが多ければ、グレーゾーンを疑ってみても良いかもしれませんね。

それだけでグレーゾーンや発達障害と決めつけられるわけではないので、あくまで可能性として考える程度で良いと思います
わが家では小学校に入った時点でグレーゾーンだったので、先生にもあらかじめ伝えておくことができましたが、中には小学校入学後に発覚した子もいたようでした。
わたしが知った中では3人いますが、3人ともさまざまなことで先生に毎日怒られていたそうです(まめ&ナツ談)。
何度言われても同じいたずらをしたり、人を不快にすることをしたり、授業を妨害したり…
ナツは、

あんなに先生が大きな声で怒っているのに、どうしてやめないんだろう?
私はみんなの前で怒られるなんて嫌だから、1回注意されたらもうしないのに…
と思ったそう。
結局わたしの知っている3名は、1人がグレー診断、2人が発達障害診断が下りたそうです。
何度言ってもやめられなかったのは、本人の性格に問題があったのではなく、グレーや発達障害の特性だったのだろうと、今はわかります。
発達特性がはっきりしてくると、学校側としても「怒る」以外の選択肢を考えやすくなるので、子ども本人もより心地よく学校生活が送れるようになるでしょう。
忘れ物や落とし物が改善しない
ランドセルの中身がぐちゃぐちゃだったり、いくら言っても宿題をしなかったり、傘や水筒を何度もなくしたり…
こうした「不注意」が繰り返され、いくら注意しても改善しない場合、グレーゾーンの可能性を疑ってみても良いでしょう。
この傾向は、ワーキングメモリという機能の発達が弱いことを意味しているかもしれません。
ワーキングメモリとは「作業記憶」とも呼び、一度習ったことを頭の中で記憶しておく機能のことです。
こういった、日常の中で自然に習得する行動がなかなか定着しない場合、ワーキングメモリの弱さが疑われるでしょう。
ワーキングメモリは、WISCとよばれる発達検査で測ることができます。
\ WISCについてはこちらを /
ワーキングメモリが弱い場合には、学校や家庭で「一度に多くの指示を出さない」「やることリストで管理する」などの対応をすることが有効とされます。
些細なことで癇癪を起こす
一般的にはそこまで怒ることでなくても、癇癪を起こすほどひどい感情表現をする場合、感情のコントロールが未発達である可能性があります。
発達障害に結びつくこともありますので、グレーゾーンを疑ってみても良いかもしれません。
たとえばテレビを消しただけで泣きわめいたり、天気などが原因で予定を変更するとパニックになったりする場合、発達障害の特性であることがあります。
\ 発達障害と癇癪は関係ある?/
わが家では、まめに「やらなければいけないことを指示する」と、同様のことが起こっていました。
癇癪というほどではありませんでしたが、とにかく数時間にわたりずっとグズっていたり、まったく機嫌が直らなかったり。
気持ちの切り替えにものすごく時間のかかる子で、特に幼児期は手を焼いたものでした。
コミュニケーションがぎこちない
お友達とのコミュニケーションがぎこちない場合、ASD(自閉スペクトラム症)特有の対人関係の苦手さが出ている可能性があります。
特にお友達自体に興味を示さなかったり、1人遊びが多かったりすると、グレーゾーンや発達障害の可能性が高くなってくるでしょう。
会話が一方的だったり噛み合わなかったり、年齢相応の対人関係が築きにくい様子がみられたら、注意して経過をみていきましょう。

えぇっ!でもまだ幼児だったら、人見知りだったり話しかけ方がわからなかったりもするよね?
そんなにすぐグレーゾーンと結びつくのかな?

確かに幼児だとコミュニケーションを学んでいる段階なので、判別が難しいかもしれません。
では、わたしが療育で教わった判別の仕方をシェアしてみたいと思います!
幼児期は、まだお友達とのコミュニケーションがぎこちなかったり、すべてのやりとりがスムーズにできたりしないことが多くありますよね。
その中でも、グレーゾーンを疑うことのできる特徴があるそうです。
子どもがお友達と遊ぶときや集団生活をするときに、以下の傾向を感じたら、グレーゾーンを疑ってみても良いかもしれません。
上記は、単なる人見知りや発達的な未熟さ(発達障害ではない)においてみられる特徴ではなく、なんらかの特性である可能性が考えられます。

ちなみにまめは、幼児期にほんのわずか該当する項目がありました。
それでも結果的にASD診断だったので、1~2つでも当てはまったら様子を見てみてくださいね!
興味やこだわりが強い
電車や恐竜など、好きなテーマに強いこだわりを見せるのも、グレーゾーンを疑える要素になります。
何度も同じ話をしたり、同じ遊びを延々と繰り返したりする場合、ASDの特性に近いものがあるかもしれません。
発達障害の1つであるASDは「反復」「こだわり」が特性として強く現れます
グレーゾーンでも対応の工夫や支援を

グレーゾーンの子どもに対しては、診断の有無にかかわらず、家庭でできる対応やサポートがたくさんあります。
親だけで抱え込まず、支援センターや保健師など専門家に相談することが大切です。
専門家に相談することで状況が整理され、必要な支援につながることもありました。
「診断がないから支援を受けられない」わけではなく、困っていることがあるという状況自体が、相談する理由になります。

実際にわたしも「なんとなく発達が…」「幼稚園でも言われて…」という装備が弱い状態で(笑)相談に行きました。それでも必要な支援につなげてもらえたので、専門家に頼るのは最善策だと思います!
まとめ
グレーゾーンの子どもは、外見や学力では気づかれにくい分、誤解や孤立を抱えやすい存在。
しかし実際に大切なのは、どんな診断名がつくかではありません。
それよりも、その子は何に困っていて、どうすれば安心して過ごせるかを考えることを優先しましょう。
正直にいうと、何の診断名がついてもやることはほぼ同じです。
ASD(自閉スペクトラム症)だからここの施設に行くとか、ADHD(注意欠如多動症)だからこのやり方でなければならない、という線引きはほとんどありません。
「定型発達~グレーゾーン~発達障害」はグラデーションなので、どの段階にいても相談することは可能。
早く気づければ適切なかかわり方や支援を選ぶことができますし、子どもにとって生きやすく笑顔の増える環境を整えてあげられるかもしれません。
子どもをよく観察して、少しでも幸せの多い社会でのびのび過ごしてほしいですね!
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