発達障害の子どもは、生まれ持った特性があります。
そのため、環境や生活状況によって、困りごとがより目立ったり行動の難しさが増すことがあります。
「悪化」と表現されることもありますが、実際には特性そのものが変わるわけではなく、外的要因やストレスによって表れ方が強くなることが原因なんです。
この記事では、発達障害が悪化したように見える主な原因と、対処法のポイントを解説します。

発達障害は「悪化」するものなの?

結論から言うと、発達障害そのものが「悪化」することは基本的にありません。
発達障害は生まれ持った脳の特性や認知の傾向であり、時間が経ったり環境が変わったりするだけで、その「特性」自体が変化することはないとされています。
ただし環境や生活習慣、心理的ストレス、支援不足などによって困りごとが強く表れたり、行動や感情のコントロールが難しくなったりすることはあります。
たとえば睡眠不足やいじめ、家庭での不安定な状況などがあると、特性が表面化しやすくなり、周囲から見ると「悪化している」と感じることがあるかもしれません。

つまり、見た目上の困りごとや行動の難しさが増すことはあっても、特性自体が進行して悪化するということはないのですね。
そのため、より良い環境にしたり適切なサポートをしたりするだけで、悪化を軽減することも可能なのです。
だからこそ早めの支援や環境調整、生活習慣の安定化が重要となるでしょう。
発達障害が悪化したように見える原因

では、発達障害が悪化したように見える原因としては、どのようなことが考えられるのでしょうか。
発達障害には、グレーゾーンや軽度と呼ばれる程度のものもあって、その差や違いはグラデーションのようになっています。
発達障害や知的障害の診断をするにおいても、そのときの調子の良さや気分、機嫌、体調などで違う結果になることもあります。
そのため、相対的に発達障害が「悪くなっている」ように見えることがあるのです。
その要因について見てみましょう。
環境要因
発達障害の子どもは、環境の変化や刺激に敏感なことがあります。
家庭や学校が子どもに合っていない場合、ストレスが増えて、行動や感情が不安定になることがあるでしょう。
たとえば、大きな騒音のある場所や急な予定変更、そして集団生活でのトラブルなどは、ASD(自閉スペクトラム症)の子どもにとって大きな負担となります。
このような環境に置かれた場合、落ち着きのなさやパニック症状が強く出る可能性も。

その結果、困りごとが目立ち「発達障害が悪化している?」と思われる原因になるのです。
こうした環境要因は、特性そのものを変えるわけではありません。
しかし、表面化する困りごとを強めてしまう要因となるでしょう。
生活習慣の乱れ
睡眠不足、偏った食事、運動不足などの生活習慣の乱れは、発達障害の子どもにとって影響が大きいとされています。
特に、情緒や集中力に直接作用するほどの大きな変化をもたらすでしょう。
ADHD(注意欠如多動症)の子どもは、睡眠が不足すると注意力が低下しやすいといわれています。
また、ASDの子どもは体内リズムの乱れにより、行動のコントロールが難しくなることもわかっています。
規則正しい生活リズムを整えることは、日常の困りごとを軽減し、子どもが安心して過ごせる土台となるのですね。
心理的ストレス
いじめや友達関係のトラブル、家庭内の不調和などの心理的ストレスは、発達障害の子どもにとって特性を強く表出させる要因です。
ストレスが蓄積すると、自己肯定感が低下し、些細なことで感情が爆発したり、注意や学習の集中が難しくなったりします。
子どもが安心感を持てる環境を作り、失敗を責めずにサポートすることが、発達障害の特性を比較的安定させた状態に保つ秘訣でしょう。
支援不足
発達障害の子どもには、定型発達の子どもには必要ではない支援が求められることがあります。
適切な支援を受けられない場合、学習や生活の困難が蓄積し、特性が悪化したように見えることがあるでしょう。
学校の通級指導や支援学級での活動、放課後等デイサービス、療育などの専門的な支援を適切に受けることが重要なのですね。
また、家庭や学校との情報共有も欠かさないようにしましょう。
支援が十分でないと、子どもは自信を失い、行動のぎこちなさや感情の不安定さが目立つようになる可能性があります。
発達障害の悪化を防ぐためには

発達障害は悪化することがないとされていますが、場合によっては悪化しているように見えたり、親御さんや学校がそのように感じてしまうことがあります。
悪化するわけではないと知れば安心要素になりますが、悪化したように見えてしまうとなれば、困り感は同じですよね。
発達障害児を育てるにあたっては、特性が悪化したように見えるという状況さえも防ぎたいと思うでしょう。
では、どのようなことに気をつければ良いのでしょうか。
環境を整える
発達障害の子どもは、周囲の環境によって困りごとの表れ方が変わります。
家庭や学校で、落ち着いて過ごせる場所や静かな空間を確保することが重要です。
たとえば、以下のことを意識してみましょう。
ASDやADHDをもつ子どもにとって、不確定な未来というのは思った以上に不安なものです。
「この先何が起こるのか」「もしこれが起こったらどうすればよいのか」を、できる限り明確に示してあげることで、本人にとっての不安が軽減されるでしょう。
不安が軽減されれば、発達障害が悪化したように見える行動に出ることも少なくなり、状態が安定します。
親御さんや先生など、まわりの大人がその子を取り囲む環境を整えることで、発達障害の特性を抑えることが可能なのですね。
生活習慣を整える
睡眠、食事、運動のリズムを整えることは、発達障害の子どもにとって困りごとの軽減につながります。
十分な睡眠は、情緒の安定や注意力の維持に不可欠。
そして、栄養バランスの良い食事や軽い運動も、集中力や体力を支えるだけでなく、ストレス耐性の向上にもつながります。
家庭でのルーティンを一定に保ち、生活の乱れを最小限にしましょう。
そうすることで、特性が強く表れないようサポートできます。
心理的サポート
子どもが安心して過ごせる環境を作ることは、心理的な悪化を防ぐ上で大切です。
失敗や困りごとを責めず、成功体験や得意なことを褒めて、自己肯定感を育みましょう。
気持ちを言葉で表現できるように促したり、感情のコントロールの仕方を一緒に練習することも効果的ですよ。
心理的な安心感が得られることで、特性の表れ方が安定し、トラブルやストレス反応が軽減されます。
支援機関の活用
学校や療育、放課後等デイサービスなどの専門的な支援を適切に活用することも、悪化防止には欠かせません。
通級指導や支援学級で学習面のサポートを受けたり、放課後等デイサービスで社会性や運動スキルを伸ばしたり…
その子の特性や家庭のスケジュールに合った支援機関を、うまく活用するようにしましょう。
家庭と学校で情報共有を密に行うことで、困りごとや成功体験を共有することもできますね。
必要な支援を受けることで、子どもが安心して力を発揮できる環境を整えられるでしょう。
発達障害が悪化しているように感じたら

それでは、発達障害が悪化しているように感じたらどうすれば良いのでしょうか。
繰り返しになりますが、発達障害は特性そのものが悪化する、いわゆる「病気」ではありません。
脳の障害なので、悪化したり改善したりすることは、医科学的には考えられていません。
しかし、悪化しているように見えたり、あるときは改善しているように見えたりするのは、その子を取り巻くさまざまな環境によるもの。
そのため、悪化しているように感じた場合には、適切なサポートを施すことで抑えられると考えられます。

わが家でも実践していて、療育や小児科の先生からアドバイスいただいたことを共有します!
環境を変えて落ち着かせる
子どもがイライラしたり不安定な行動を示したときは、まず環境を落ち着かせることが重要です。
騒音や人の多い場所を避け、静かな空間で過ごせるようにするだけでも、子どもの気持ちを安定させる効果があります。
また、学習や遊びの場所を整理整頓し、視覚的刺激を減らすことも有効でしょう。
環境を一時的に整えることで、子どもは自分の気持ちを整理しやすくなり、困りごとがエスカレートするのを防ぐことが期待できます。
家庭内でも、落ち着く場所や安心できるものを用意しておくと、緊急時にすぐ活用でき便利ですよ。

わが家では、次の2つを意識するようにしています。
まめはイライラしたとき、自分の部屋にこもって何かに集中するのが好きです。
そのため、自分の気持ちを落ち着かせたいときには、自室でマンガを読んだりブロックで何かを作ったり、絵を描いたりしています。

ただ、そこからまた「やらなきゃいけないことをやる」というモードに切り替えるのが大変なんですけどね…笑
もし気持ちが高ぶってパニックを起こしたり、他害をしてしまったりする子がいたら、このように環境や場所、行動を変えて気分転換をするのも良い方法です。
気持ちを言語化するのを手伝う
子どもが感情的になっているときは、まずその気持ちを受け止め、言葉で表現できるよう促すことが効果的です。
「悲しい」「困った」「ムカつく」といった単純な言葉でも、本人が気持ちを整理する手助けになるでしょう。
親が共感的に聞くことで、子どもは「理解されている」と安心感を得ることができます。
これは、大人が思っている以上に子どもの心を癒す効果があり、行動の暴走や自己主張の衝動を落ち着かせることが期待できます。
また、感情を表すカードやイラストを使うと、視覚的なサポートとなりより効果的でしょう。
言葉での表現が難しくても、ジェスチャーや表情でコミュニケーションをとることが、子どもの安心感につながりますよ。

すぐできる「安心行動」をする
気持ちが高ぶったときに、心を落ち着かせるために「すぐできる行動」を一緒に実践するのも有効です。
たとえば深呼吸を数回行う、軽いストレッチをしたり歩いたりという軽い運動をする。
また、好きなおもちゃや本に触れるといった、短時間で完了できる行動を探してみましょう。
事前に子どもと一緒に「安心行動リスト」を作っておくと、子ども自身も自分で選択しやすくなりますね。

子どもが自分で選ぶという行動自体も、怒りやかんしゃくを一瞬忘れることができるので、気持ちを切り替えるきっかけになります
また、安心行動は毎日の生活の中で少しずつ練習しておくことで、いざ不安定になったときに自力で実践できる確率が高まります。
短時間で実施できる行動を習慣化しておくことが、悪化の一時的な抑制に役立ちます。

習慣化すれば、1人でいるときにイライラしても自分で安心行動をして、パニックを抑えられるかもしれないんだね
信頼できる大人に相談する
その場で対応が難しい場合は、信頼できる大人に状況を共有しましょう。
学校の担任、支援員、療育スタッフなどに相談することで、より専門的で適切な対応を受けられます。
また、子どもが家庭内で見せた困りごとや行動を共有することで、周囲の大人が一貫した対応を取りやすくなるのもメリットです。
早期に第三者のサポートを得ることで、子どもの安心感が高まり、行動の悪化を防ぐ効果も期待できるでしょう。
特にストレスの高い状況では、親だけで抱え込まず、外部の支援を活用することが重要です。

当ブログでもくりかえしお伝えしていますが、幼稚園や保育園、学校に通っているお子さんなら、先生と細かなことまで情報共有をすることがとっても大事。
「かんしゃくを起こしたときには、別部屋に移動させて落ち着かせています」
「問題行動をしたときには肩を叩いて気づかせると、ハッと我に返ります」
こういった情報を先生に共有することで、学校の先生も同じ対処法をおこなうことができます。
特に発達障害児にとっては、対応が一貫していたほうが認識が高まりやすく、善悪の区別をつけやすくなります。
家でうまくいった対応、逆にどうにもならないことなどを、信頼できる大人に相談・共有することで、表出する特性を抑えられるかもしれません。
まとめ
発達障害は本質的に「悪化」するわけではありません。
しかし、環境や生活習慣、ストレス、支援不足によって困りごとが強く表れることがあります。
子どもが安心して過ごせる環境を整え、必要な支援を適切に受けられるようにしておきましょう。
そうすることで、困りごとの悪化を防ぎ、子どもが持つ力を伸ばすことができるかもしれません。
「悪化した」と暗い気持ちにならず、少しでも特性の表出を抑えられるように、親も子も気持ちよく過ごせる環境づくりを模索できると良いですね!










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