「小学校に入ってから、うちの子ちょっと周りと違うかも…」
そんなふうに思い始めると、親御さんは
「もしかして発達障害?」
「個性だと思って良いのかな?」
と、戸惑うのではないでしょうか。
小学校は、幼稚園や保育園とは違う集団生活の始まり。
そこで初めて浮かび上がる困りごとにより、家庭では見えにくかった特性が明らかになることもあります。
実際小学生というのは、学習・対人関係・生活習慣などの場面で、子どもに求められる力が大きくなります。
それにともない、発達の偏りが目立ち始めることも。
この記事では、小学生の発達障害児に見られる主な特徴と、その特徴が表れやすい場面について解説します。

発達障害とは?簡単に解説

発達障害とは、脳の発達の特性により行動・感情・社会性・学習などに偏りが生じる状態のことです。
代表的なのは、以下の3種類です。
このほかにも細かな分類をすると数々の発達障害が存在します。
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このように、さまざまな種類の発達障害がありますが、診断名にこだわりすぎる必要はありません。
診断名よりも重要なのは、子どもがどのようなことを苦手としていて、何が得意なのかという視点で見ること。
診断名にこだわるべきでない理由は、同じ診断でも特性は人によって違い、またひとつの特性が、複数の診断にまたがって表出することもあるからです。
小学生という発達段階では、特に集団行動のルールや時間の管理、言葉でのやりとりが生じる場面で、困りごとが表れやすいでしょう。
それでは、小学生によくみられる発達障害の特徴を見てみましょう。

わが家の体験談も交えながら解説します!
小学生にみられる発達障害の特徴

小学生の発達障害の特性は、社会的なやりとりが必要な場面で表れやすいとされています。
発達障害の種類ごとに、よくみられる困りごとを見てみましょう。
発達特性 | 主な困りごと | 具体的な特徴 | よくある誤解 |
---|---|---|---|
自閉スペクトラム症 (ASD) | 対人関係 柔軟性 | ・集団行動が苦手 ・1人で過ごすことを好む ・予定外の変更でパニックを起こす可能性 ・相手の気持ちや空気を読むのが苦手 | 協調性がない 自分勝手 |
注意欠如・多動症 (ADHD) | 注意力 衝動性 多動性 | ・じっと座っているのが苦手 ・忘れ物が多い ・順番を待てない ・思いついたことをすぐ言う | 落ち着きがない ふざけている |
学習障害 (LD) | 読み書き 計算の困難 | ・特定の学習分野で著しい困難がある (読み・書き・計算など) | やる気がない 努力不足 |
上記の発達障害のうち、ASDとADHDは知的障害をともなっている可能性があります。
LDは、この中で唯一知的障害をともなわない障害の種類です。
ASDは早いと1歳くらいから特徴があらわれ始める発達障害なので、幼児期に発覚することがあります。

ASDの特性はやや独特なので、発達障害の中でも気づかれやすいといわれています
判断が難しいのは、ADHDとLDです。
ADHDは落ち着きのなさや不注意など、幼児の特徴と重複する特性が含まれており、幼児期にADHDが疑われても診断がグレーになるケースがあります。

落ち着きがない、順番を待てない、ってほとんどの幼児に当てはまるもんね…
しかし、それが小学生以降も続く場合には、ADHDが疑われるようになるでしょう。
そしてLDは「学習障害」のため、実際に学習が始まる小学生以降で発覚することの多い発達障害として知られています。
幼児のうちは、読み書きができなかったり計算が苦手だったりしても、それを障害とは判定しないからです。
よって、多くの発達障害の特性が小学生以降で顕著化するケースがあるのです。
それでは、具体的にどのような場面で発達障害の特徴があらわれるのか見てみましょう。
授業中の困りごと
小学生の発達障害児の場合、授業中に困りごとが発生することが多くあるでしょう。
授業は、それまでの幼稚園や保育園生活にはなかった習慣の1つです。
元気いっぱい走り回っていた子どもたちが、突然45分間じっと座っていることを強いられたら…
苦痛に感じてしまう子がいても、不思議ではありませんよね。
小学生で発達障害の特徴が出る場合、以下の困りごとがあります。
すべて「子どもらしい」といえばそうなのですが、実際に小学生になると、これらの行動は発達障害のサインとしてみられることが多くあります。

最初の1ヶ月くらいはこの状態でも大目に見てくれる先生がいるかもしれませんが、クラス全体を進行する妨げになる場合、親御さんに直接相談があることも…
小学生になると、45分間座って先生の話を聞いたり、黒板に書かれた内容を書き取ったり、ただでさえやることが盛りだくさん。
それでいて、ひらがな・カタカナ・漢字・足し算・引き算…学ぶこともたくさんあって、すべてをきちんとこなすことは難しいでしょう。
特に発達障害の傾向がある小学生の場合、この中でできないことが顕著に表れることがあります。

ぼくは1~2年生のうちは、授業中に立ち歩いちゃうことが多かったよ
休み時間の困りごと
小学生の発達障害児の場合、休み時間にも困りごとがある可能性があります。

えっ!休み時間って自由に過ごせるんじゃないの!?

基本的にはそうなんですが、小学生の休み時間は何気に制限があって、ただの自由時間ではないことが多いんです
小学生になると、幼稚園や保育園のときのように先生が逐一フォローしたり、声かけをしたりすることが減ります。
先生にもよりますが、基本的には「自分のことは自分でやる」というスタンスになり、先生は個々というよりクラス全体に声をかけるだけ、というケースも多くなっていきます。
発達障害の傾向がある子どもが休み時間中に困るのは、主に以下のことです。
小学生になると、休み時間というのは単に遊ぶ時間ではなく、次の授業のための準備時間であることも多々あります。
体育の前の休み時間に着替えを済ませたり、授業中にトイレに行かなくて済むよう休み時間に行っておいたりなどです。

これが、思った以上に難しい…!
実はこの「休み時間の過ごし方」というのは、幼児期のうちになんとなくイメージしておくのが大切で、まめも療育で繰り返しレッスンをしました。
でも実際に小学校に上がると、幼稚園とは違う刺激や新しいお友達との出会いで「着替えやトイレ」どころではなくなってしまいました(笑)
トイレは、最悪授業中でも行かせてもらえますが、困ったのは体育の着替えや移動教室です。
休み時間になると、教室全体の雰囲気が一気にフリーモードになるので、当然ですがまめも気が緩んでしまいます。
先生が「次体育だから着替えておいてね」「次音楽だから移動教室だよ」と全体に声をかけても、まったく聞いていないことも。
そして、気が付くとまわりの子は着替えを済ませて体育の準備をしているのに、まめだけ何もしていないという状態になってしまっていました。

わたしがついていれば声をかけられるものの、学校なのでそういうわけにもいかないし…困り果てました
先生がご厚意で、まめに個別の声かけをしてくれたり、補助の先生が声かけをしてくれたりして、なんとかなった(なったのか…?)1年生。
小4になった現在も、気が逸れがちなのは変わらないのですが、なんとか次の授業に間に合うように動けるようにはなってきているみたいです。

というか、小4になっても男子はずっとふざけていて、着替えが遅いのはまめだけではないみたい(笑)
また学校によっては、休み時間に遊んでよい場所や時間帯などのルールがあります。
人数の多い学校だと、校庭で遊べる学年が曜日によって決まっていたり、図書室に入室して良い時間が決まっていたりします。
そのルールを守るのも学校生活のうちなので、休み時間といっても「完全に自由」というわけではないのですね。
友達関係での困りごと
小学生の発達障害児の場合、友達関係で困りごとがある可能性があります。
発達障害児に友達や対人関係のトラブルは、付き物といっても過言ではないほど。
空気を読むのが苦手だったり、少ししつこくしてしまったり、仲間に入るのが苦手だったり…
ただでさえ、小学生にはさまざまな友達トラブルがありますから、発達障害の傾向がある子どもにとっては難しい場面がたくさんあると思います。
個人的には友達トラブルの場合、親御さんで判断できることは少ないと感じます。
「宿題をやらない」「授業を理解していない」など、親御さんの目でも確認できるようなトラブルではないからこそ、友達関係での困りごとはほぼ学校での対応になるでしょう。
そのため友達関係での困りごとに関しては、担任の先生と連携をとることをおすすめします。

連絡帳や電話でのやりとり、また定期的に面談の時間を作ってもらうなど、先生が調整できそうな方法を相談してみてください
(連絡帳が一番手軽でした)
先生に「小さなことでもトラブルがあれば都度知らせてほしい」などとお願いしておくと、こまめに報告してくれると思います。
行事での困りごと
小学生の発達障害児の場合、行事のときに困りごとがある可能性があります。
運動会やお楽しみ会、発表会などの行事は、ふだんの学校とまったく違うスケジュールになりますよね。
そのため、予定変更が苦手な子はパニックを起こしたり、集中力が欠けたりする可能性があります。
保護者や学校ができる「合理的配慮」

発達障害の特性が見られたからといって、すぐに「どうにかしなければ」と思い詰める必要はありません。
大切なのは「この子には何が困りごとになっているのか」を丁寧に観察し、周囲の大人が環境を整えていくことです。
このように、その人の特性や性格に合わせて環境を整えたり、必要な変更や調整を行ったりすることを「合理的配慮」といいます。
内閣府によると、令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されています。
つまり、発達障害の特性を持つ小学生に関しては、学校側に合理的配慮を求めることができるんです。

「合理的配慮」は内容や方法が決まっているわけではないので、先生と相談して子どもに合った環境を調整してもらいましょう
合理的配慮には、たとえば以下のようなものがあります。
時間の感覚が苦手な子ども | 時間の経過が視覚的にわかるように「タイマー」を使う |
順番を待つのが難しい子ども | 数字が書かれた順番カードを見せる |
大声を出してしまう子ども | 気持ちを落ち着かせる「クールダウン部屋」を作る |
忘れ物が多い子ども | おしたくボードで1つ1つ準備する |
書くことが苦手な子ども | タブレット学習を取り入れる |
集中力が続かない子ども | 授業の合間に身体を動かす時間を挟む |
行事やイベントが苦手な子ども | 落ち着いていられる別場所を用意する |
合理的配慮を通して子どもの学校生活をより充実させるためには、学校と親御さんが連携することが重要です。
担任の先生や支援コーディネーターに困りごとを伝え、協力を得ることで、家庭だけではできない支援の幅が広がります。
無理をせず、少しずつできることを重ねていくことが、子どもにとっても安心につながるでしょう。
親子でストレスを減らすためには

発達障害をもつ小学生を育てていると、難しい年ごろであることに加えて、発達特性と向き合わなければいけない課題もたくさんあるでしょう。
わが家のまめは現在小4で、まだ小学校生活は残っていますが、ここまで来るのにいかにしてストレスを軽減させてきたか、振り返ってみたいと思います。
発達障害をもつ小学生を育てるならば、親子ともにストレスを減らす努力や工夫をすることが必要。
それぞれの家庭で手を抜けるところや、頑張らなくても良い部分を見つけて、バランスをとっていきましょう。
子どもの「できた」に注目する
発達障害のある子どもは、苦手なことにばかり注目されがちです。
しかし、毎日の中で少しでも「できたこと」を見つけて褒めることが、自己肯定感を育てる第一歩になります。
たとえ小さなことでも、具体的に伝えると効果的です。
子どもは「分かってもらえた」「認めてもらえた」という安心感を得られ、親子の信頼関係が深まるきっかけにもなりますよ。

とはいえ、親御さんは普段の子育ても忙しく、褒める余裕がないこともあると思います。
担任の先生やスクールカウンセラーの先生と連携して、周囲の大人にも積極的に褒めてもらえるよう”根回し”するのも1つの手です!
まめは小学校2年生のときの担任の先生が「悪いことにはある程度目を瞑り、できたことは言葉にして褒める」という考え方をされていました。
この方法がまめに合っていたようで、問題行動(授業中に立ち歩いたり友達にちょっかいを出したり)が少しずつ減っていったのも2年生の頃でした。
スクールカウンセラーの先生に

発達障害の子は問題行動を叱っても改善しません。ある程度は大目に見てやって、成功したときに具体的に褒めるのが鉄則ですよ
と言われたことがあったので、発達障害のある子には有効な方法なのだと実感しました。
無理に「普通」を目指さない
「みんなと同じようにできるようにさせたい」と思う気持ちは自然なことです。
しかし、発達特性を持つ子にとってはそれが大きなストレスになることがあります。
苦手なことを無理に克服させようとするよりも、得意なことを伸ばす関わり方のほうが、子どもにとっても親にとっても心が軽くなるでしょう。
周囲と比べるのではなく「その子なりの成長」に目を向けることで、親の気持ちにも余裕が生まれます。

毎日子育てをしていると、できないことや周囲との違いに目が行きがち…
でも、結局本人が毎日楽しく笑顔で過ごしていて、なにより健康なら何でもいいじゃない!と思えるときが来ると思います
まめは、確かにできることが少ないかもしれない。
でも、いろんなことに興味を持って、いつも目を輝かせて新しいことにチャレンジするのが好きな子です。
それは、誰もが持てる志ではありません。
そういう長所に目を向けてこそ、まめの本当の幸せにつなげてあげることができるのだ、と常に自分に言い聞かせていました。
親自身のケアを後回しにしない
子どものサポートに一生懸命になりすぎて、親御さん自身の心と体が疲れ切ってしまうこともよくあります。
まずは自分の気持ちを大切にし、信頼できる人に話したり、時には専門機関に相談したりすることも考えてみましょう。
自分だけの時間をほんの少しでも作ることで、気持ちをリセットしやすくなるかもしれません。

わたしも時々やるんですが、自分の気持ちや目標を書き出す「ジャーナリング」がおすすめです!
時間ができたとき、ホッと一息つきながらジャーナリングタイムを持ってみてはいかがでしょうか?
親御さんが心に余裕を持つことが、子どもにも安心感を与える土台になります。
まとめ
小学生の発達障害の特徴は、一見「わがまま」や「マイペース」に見えることもあります。
しかし、その背景には認知の特性や感覚の違いがある場合も。
大切なのは診断名にとらわれず、目の前の子どもが「どんなことで困っているか」「どんな支援があればうまくいくか」に目を向けることです。
子どもは日々成長しています。
できる・できないで判断するのではなく「どうすればこの子が楽に過ごせるか」を一緒に考えていく姿勢が、本人の自己肯定感を育てる一歩となるでしょう。
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