この記事では「発達グレー」の特徴についてわかりやすく解説します。
わが家では、長らく発達グレーだった息子・まめ(小3)がいます。
発達グレーは、発達障害とは言い切れないけれどその傾向がある状態をいい、実は宙ぶらりんで困りごとも多いんです。
発達グレーでも、適切な支援につなげたり福祉サービスを受けたりすることが重要です。
わが家の体験談とともに、発達グレーの特徴についてご紹介します。

発達グレーとはどんな状態?

発達グレーとはどのような状態をいうのか、解説していきます。
わが家のまめは、小学生になって2回目の発達検査を受けるまで長らく「グレー」の状態でした。
そんなわが家の体験談やまめの日常生活についてご紹介しながら、発達グレーとは何か説明してみたいと思います。
正確な診断名ではない
発達グレーは「グレーゾーン」と呼ばれますが、実は正式な診断名ではありません。
診断名ではないからこそ、通称「グレー」と呼ばれているんですね。
発達グレーとは、以下の状態を指します。
発達障害の傾向があるものの、医療機関の診断基準に満たない状態
診断基準に満たないということで「症状が軽い」「健常児とほぼ同じ」というイメージを持たれがちなのですが、実はそういうものでもないんです。
発達グレーだからこそ困ることや、直面する壁は多いものです。
発達障害の傾向はある
発達グレーの子は、正式に発達障害と診断されてはいませんが、発達障害の傾向や特性のある状態です。
発達障害の特性を持っているのに診断されないことで、非常に中途半端な状態であることは否めません。

発達障害の傾向をもつ子を育てる親からすると、診断名がついたほうが楽だという気持ちにすらなります…
わが家のまめは、幼稚園年中(4歳)のときに新版K式発達検査を受け、実年齢よりも9~10ヶ月遅れているという結果が出ました。
詳しくは:厚生労働省
発達障害であると断定はされず、この先小学校に上がる際にも「支援級ではなく通常級のほうが良い」といわれたほどでした。

でも、発達障害の傾向はあるんです。困っているんです。(切実)
まめは早生まれなので、周囲のお友だちと比べて数ヶ月~1年くらいの遅れがあるのは当然だと思っていました。
正直「9~10ヶ月の遅れがある」という結果には「そりゃそうだろうね」としか思いませんでした(笑)
結局そのときは「発達障害とはいえないから、いろんなことを経験させて習得させれば大丈夫」という結果に終わったのでした。
健常児と同じ基準が求められることがある
発達グレーは「発達障害」と診断されないため、分類としては「発達障害ではない子ども」となります。
そうなると、健常児の子どもたちと同じ教室で同じ授業を受けたり、同じ時間を過ごすことになりますね。
でも、発達障害の傾向はあるんです。
発達障害の傾向がある子どもが、健常児と同じ基準の中で生活しなければいけないのはとてもしんどかったです。

本人はマイペースな子だったので、幼児期はあまり気にしていなかったようですが、親はヒヤヒヤ…
毎日幼稚園から電話がかかってきて、それはそれは地獄の日々でした…
こういった理由で、発達グレーの子を育てる親御さんは「診断名をつけてほしい」と希望することがあるのですね。
「症状が軽い」わけではない
発達グレーの子は、発達障害の診断基準を満たしていない状態です。
ということは「発達障害の子よりも症状が軽い」「特性が弱い」と思われるかもしれません。
しかし、発達障害の症状が軽いことを「グレー」とは呼びません。
ややこしいですが、発達障害の程度が軽い場合は「軽度発達障害」という呼び方をします
そう、発達グレーと軽度発達障害は微妙に違うんですね。
軽度発達障害は、文字通り「発達障害だけれど症状がごく軽度な状態」をいいます。
たとえば、以下の特徴を持っていることがあります。
参考:Kaien
このように、軽度発達障害は発達障害の診断基準のごくごくわずかを満たしている状態を指します。
一方の発達グレーは、基準の90%を満たしていてもグレーであり、20%だけ満たしていてもグレーなんです。
参考:ブレインクリニック

20%だけ満たしている子と90%も満たしている子では全然違うね…!
発達グレーの子どもの特徴

発達グレーの子にみられる特徴についてご紹介します。
発達グレーといっても、発達障害には3種類ありますので、どの特性があるかによって特徴が違います。
まず、発達障害の3種類について簡単にご紹介します。
発達障害の種類 | 特性 |
ASD(自閉スペクトラム症) | コミュニケーション力の欠如、特定の行動や習慣へのこだわり、環境の変化の困難さなど |
ADHD(注意欠如多動症) | 不注意、衝動性、多動性 |
LD(学習障害) | 読み書きや算数など特定の学習能力の困難さ |
上記をふまえて、それぞれのグレーゾーンの子にどのような特徴があるのか見てみましょう。

ちなみに、まめはASDとADHDのグレー状態でした
参考:LITALICOジュニア
ASD×グレーの場合
ASDのグレーである場合、以下の特徴がみられます。
わが家のまめにみられたのは、以下のものでした。(今もあります)
幼児期に、すでにこの特徴がみられていたので「ASDの傾向があるな」とは思っていました。
しかし、K式発達検査では断定できないといわれたので、結局「グレー」と名乗ることになります。
ADHD×グレーの場合
ADHDのグレーである場合、以下の特徴がみられます。
わが家のまめは、幼児期のうちはASD傾向が強かったのですが、小学校に入学するとADHDの傾向が出てきました。

発達障害ってこういう形であとから出てくることもあるんだ…!と初めて知りました(笑)
まめが小学校に入学してからみられた発達グレーの傾向は、以下の通りです。
幼稚園では外遊びがメインだったので気づきにくかったのですが、小学生になると座っている時間が長くなるので、集中力の短さが目立つようになりました。
それでも、まめの担任の先生は

1年生なんて幼稚園児の延長ぐらいに思ってますから、あまり気にされないでくださいね!
と、とても大らかに対応してくださいました。
「1年生はまだ授業にも慣れていないから、座っていられなくても仕方ない」という先生の考え方には感謝していますが、個人的な所感としては、1年生で授業に立ち歩いてしまうのは若干の「グレー」かなと思います。

「うちの子も授業中に立ち歩くけど、1年生だからそれくらい仕方ないよね」と言っている保護者の方を見て、煮え切らない気持ちになったのを覚えています
LD×グレーの場合
LDのグレーである場合、以下の特徴がみられます。
LDは学習障害のため、幼児期では気づかないケースが多いでしょう。
小学生になって勉強が本格化すると、担任の先生がLDの傾向に気づいたり、親御さんが宿題を見ながら気づいたりすることがあります。
まめは今のところLDの傾向はみられないのですが「文章題が苦手である」という部分のみ当てはまっているので、引き続き小児科で様子を見ているところです。
文章題が苦手というのはLDではなく知的な遅れの可能性もあり、診断が難しいようです。
なぜ発達グレーの子には診断がつかないのか

発達グレーの子は、発達障害の傾向があるのに「診断基準を満たしていない」という理由で、健常児と同じ扱いになるケースが多くあります。
では、なぜ発達グレーの子には診断がつかなかったり、診断基準を満たせなかったりするのでしょうか。
発達障害には明確な線引きがないから
発達障害の検査や診断には、明確な線引きがありません。
しかし、検査ですから「満たすべき基準」は複数あります。
たとえば10個の基準があると、10個すべてを満たしてはじめて「発達障害」と診断されます。
そのうち9個しか該当しない場合、発達障害とは診断されないのです。

10個中9個っていったら、もうほとんど満たしているよね…
そして、その基準を満たしているかどうかは、最終的に医師の主観になることが多いのだそうです。
そのため、ある医者は発達障害と診断し、ある医者は診断しないということが起こりうるのですね。
さきほどの例でいうと、10個中9個しか該当しないと判断する医師もいれば、残りの1個も該当すると診断してくれる医師もいる、ということです。
参考:就労センター
調子が良いときと悪いときがあるから
発達グレーの子と発達障害の子の違いの1つに「調子が良いときと悪いときがある」というものがあります。
発達障害の子は、比較的常に特性が出ていることが多い一方で、グレーの子は体調や気分によって特性が出ない日があったりするんです。
ただでさえ発達グレーの子は、診断基準を満たすか満たさないかというギリギリのラインにいますので、体調が良いときには症状が出ないことも。
発達検査を受けたときにたまたま調子が良ければ、発達障害の診断が下りないことがあるでしょう。
参考:ブレインクリニック
わが家のまめが発達検査を受けて「発達障害」だと断定されなかったのも、たまたま調子が良かっただけなのではないかと思っています。
特にまめはASDの傾向が強く、同年代のお友だちとのコミュニケーションが苦手な子でした。
しかし、発達検査は検査官の先生とマンツーマンで行うため、まめはスムーズにコミュニケーションがとれたのではないかと思うのです。

発達検査だけでなく、普段のお友だちとのかかわりなどを見て総合的に判断してほしかった…というのが、当時の本音です
発達障害と断定できる情報が少ないから
発達検査は、本人が行うアセスメントのほかに、本人や保護者に「幼児期について」ヒアリングする項目があります。
しかし、発達検査を受ける年齢が高ければ高いほど、幼児期の記憶が薄れてしまっていて、情報が少なくなってしまいます。
その結果、ヒアリング項目で発達障害の診断基準を大幅に下回ってしまう可能性があるのです。

このヒアリング項目は絶対で、本人や保護者の記憶だけが頼りなので、覚えていない場合には診断基準を満たせないのだそう…
発達障害の子どもより工夫するのが上手だから
発達グレーの子は上手に工夫して社会に適応しており、診断が下りないことがあります。
特に年齢が高くなり、自分なりに生きづらさを感じにくい振る舞いや言動を熟知すると、まわりからは「発達障害」とは思われないようになっていくでしょう。
大人の発達障害にも多い傾向だそうです!
発達障害は、前述したとおり「調子が良いときと悪いときがある」ので、調子が良いときやうまくいっているときの成功体験を知っています。
そのため「うまくやるにはこうすればいいんだ」「こうすると失敗するからやめよう」という学習をしている可能性があるのですね。

発達障害がない人も、そうやってうまく立ち回ってなんとかやっているよね
そういう意味でも「グレー(発達障害ではない)」といわれてしまうんだろうね

個人的には、自分で工夫してうまくやれているのであればそれはそれで良い気もしますが、本人がしんどさや生きづらさを感じているかどうかが問題ですよね
発達グレーの特徴がある子への支援

発達グレーの子が受けられる支援は、以下のようなものがあります。
発達グレーは発達障害ではないので、理解や支援を受けづらいのが事実ですが、適切なサポートを受けられる可能性もあります。
「発達グレーだけど福祉サービスを受けたい」という場合には幼稚園や保育園の先生、小児科の先生、保健師さんなどに相談してみてください。
自治体によっても福祉サービスを受けられる条件が違うので、まずは自治体窓口へご相談することをおすすめします!
療育に通えることがある
発達グレーの子は、療育に通えることがあります。
療育に通うために必要なのは「通所受給者証」という証明書です。

療育手帳や医師の診断はいらないの?

確かにあったほうが療育の面談に通りやすいところはあります。
でも「受給者証」さえ取得できれば、療育には通うことができます!
受給者証の取得方法については、こちらの記事でくわしく解説しています。
かくいうわが家も、療育になんと週4~5日通っていたヘビーユーザーです。
でも、当時は診断が下りていませんでした。
わが家で受給者証を取得でき、療育に通うことができたのは、以下の理由があったと思います。
受給者証申請の窓口ではやんわりと「医師の診断書とかはないんですね…」といわれたので、やっぱり診断がある方が通りやすいのだと思います。
でも、先に療育施設を探してそこで通所OKをもらえれば、受給者証はほぼ交付されるのではないかと思います。

受給者証の申請書類は療育施設で用意してくれることもあるので、その時点でかなり有利だと思います
まわりでも「療育施設で用意してもらった書類で受給者証を却下された」という例は聞いたことがありません
発達グレーであっても、療育施設に相談することで交渉が可能ですので、ぜひ相談してみてください!
支援級に入れることがある
発達グレーの子は、支援級に入れる可能性があります。
学級には「通常学級」「通級」「特別支援学級」の3種類があります。
ここでは「特別支援学級」通称・支援級についてお話します。
支援級に入る児童は以下7つの障害のうち、いずれかに該当することが基本条件となります。
参考:保育士くらぶ
当然、発達グレーは含まれていませんね。
しかし、自治体や学校によっては発達グレーの子も支援級に入れることがあります。
教育委員会が設置されている地域ごとに異なるので、進学先の学校に問い合わせてみることをおすすめします。

まめは、幼稚園と療育の先生と話し合った結果「まずは通常級で頑張ってみよう」ということになりました
最初は通常級で過ごしてみて、難しそうなら次年度から支援級を検討することもできます。
ただし、支援級と通常級では授業の進み具合が違うので、支援級から通常級に戻るのは簡単ではないようです。
参考:CONOBAS
何にしても、子どもに合ったペースで学習ができる環境を選ぶことは、発達障害の有無にかかわらず重要なことですね。
合理的配慮の対象となる
発達グレーの子は、合理的配慮を受けることができます。
合理的配慮は発達障害の有無に関係なく、その人がその場所で過ごしやすく個別の変更や調整をする配慮のことです。
学校でいえば、情緒が不安定な子に対してはクールダウンできる別部屋を用意したり、テキストでは学習がしづらい子にはデジタル教材を与えたりなど、その子に合わせて配慮を変えるという対応を受けられます。
合理的配慮は「障害者差別解消法」にて義務付けられています。
「障害者」とありますが、障害の有無に関係なく受けることができますので、まずはまず保護者や本人から学校・施設に要求してみてくださいね。
参考:LITALICO
まとめ
発達グレーとはどのような特徴があるのか、解説しました。
発達グレーは、正式に発達障害と診断されていない状態をいいます。
しかし、だからといって「症状が軽い」「健常児とほぼ変わらない」というのは間違いで、グレーにはグレーの困りごとや壁があるのですね。
しかし、発達グレーの特徴があっても福祉サービスを受けることができたり、合理的配慮を求めたりすることができます。
発達グレーの子を育てる保護者の方にとって、参考になれば幸いです。
コメント