この記事では、軽度発達障害とグレーゾーンの違いについて解説します。
発達障害にはさまざまな種類がありますが、特に混同しやすいのが「軽度発達障害」と「グレーゾーン」というもの。
発達障害には「軽度」と「グレーゾーン」というものも存在しているんです。
発達障害支援法が2005年に施行されてから、発達障害の範囲がさらに広くなりました。
現在は「発達障害かそうでないか」という区別ではなく、グラデーションのように考えられています。
そのため、そのグラデーションのなかに「軽度発達障害」や「グレーゾーン」が含まれるようになったのですね。
具体的に、発達障害の「軽度」とはどのような状態なのか、また「グレーゾーン」とは発達障害の中に入るのか、解説していきたいと思います。


わが家では「軽度」と診断されたことも「グレー」といわれたこともあります。
具体的にどう違うのか、わが家のケースをもとにわかりやすく紐解いていきましょう!
発達障害の「軽度」とは?

発達障害の「軽度」とは、文字通り発達障害の程度が軽い状態のことを表します。
しかし結論からいうと「発達障害が軽い」という言葉は語弊があることから、現在ではほとんど使われていないようです。
参考:厚生労働省
まずは、発達障害がどのように診断されるのか見てみましょう。

発達障害の「軽度」は、上記の図における「発達障害」に当てはまります(一番左の人)。
発達障害の検査項目で1つも当てはまらなければ「定型発達」とみなされ、1つでも当てはまればグレー判定となります。
すべてに当てはまった場合のみ、発達障害と診断されます。
発達障害が「軽度」と診断される基準は、以下の通りです。
発達障害が「軽度」だと診断された場合には、診断基準のごくごくわずかを満たしている状態ということです。

「軽度」だと、そこまで困りごとは多くないのかな?という印象ですね

そう思われがちなんですが、実は軽度=困りごとが少ないとは限らないんです
このような誤解が生まれやすくなることを危惧して、現在では「軽度発達障害」という呼び名を積極的に使わなくなったそうですよ。
グレーゾーンとの違いは?

発達障害が「軽度」であった場合、グレーゾーンとはどのように違ってくるのでしょうか?

軽度=グレーのような気もするし、グレーだと軽度なのかなという気もする…別物なの!?
「軽度発達障害」と「グレーゾーン」には、微妙でありかつ明確な違いがあります。
まず、決定的な違いは以下です。
先にお話した通り、軽度発達障害は発達障害の診断基準をごくごくわずかに満たしている状態。
それに対してグレーゾーンは、発達障害の診断基準をギリギリ満たしていない状態をいいます。
\ 図解で見てみよう /


「重度」に近いところにいても、発達障害と診断されず「グレーゾーン」になってしまうの!?

診断に必要な項目「すべて」が診断領域に入らないと、発達障害という診断はされないんです
また、グレーゾーンというのはあくまで通称であり、医師が使う正式な言葉ではありません。
上記の図解を見ると、明らかに「診断領域内」にいるにもかかわらず、グレーゾーンになってしまう人もいることが分かります。
このように、グレーゾーンとはほぼ発達障害といってもいいくらい困りごとは深刻である可能性があります。

軽度やグレーだから健常児と変わらない、とは言い切れないんだね
さきほどの図解と同じものを用いて、軽度発達障害がどの位置にいるか見てみましょう。


軽度発達障害って、グレーゾーンと同じ位置にいることがあるんだ…!

そうなんです。
混同してしまうのも無理ないですよね
実際にわが家のまめも、最初は「グレーゾーン」といわれていた時期がありました。
発達検査をしても、明確に「この子は発達障害です」と診断されるに至らなかったのです。
しかし、仮にさまざまな種類の検査を片っ端から受けていたとしたら、そのうちのいくつかでは「軽度発達障害」と診断されていただろうと思います。

それぐらい、2つは酷似した状態です
発達障害「軽度」ならではの困りごと

発達障害の軽度といっても、日常生活における困りごとはあります。
集団の中で発達障害とそうでない人たちのグラデーションを見てみると…

このように、明確に線引きされているわけではないことが分かりますね。
定型発達児を育てるご家庭でも悩みがあるように、グレーゾーンも発達障害も、それぞれに困りごとがあります。
だからこそ「軽度発達障害ならではの困りごと」も存在するのです。
軽度発達障害ならではの困りごとには、以下のようなものがあります。
わが家のまめは、発達障害と診断されてからも「軽度である」という見解は変わりませんでした。
幼児期に強く出ていたとわたしが思っていたASDの傾向も、検査をしてみると「そこまで顕著ではない」という結果に。
グレーゾーンだといわれていた頃と変わらず、部分的に特性が強いという診断が続いています。
具体的にどのようなことが困りごととして挙げられるのか、掘り下げてみましょう。
周囲からは健常児だと思われる
発達障害が軽度である場合、周囲から健常児だと思われることが「困りごと」として表出することがあります。
健常児だと思われるということは、周囲はその子を「支援が必要な子」「発達障害や知的障害がある子」だとは思っていないということです。

一見困りごとには思えないけど、何がダメなの?
これは当事者でないとなかなか感じられない部分だと思うのですが、
普通にできて当たり前
だと思われ、健常児と同じ水準が求められるのです。
子どもの発達障害を受け入れらない場合、周囲から健常児だと思われるのは嬉しいことかもしれません。
「やっぱりうちの子は発達障害ではないんだ」と、安心感を感じるきっかけにもなるでしょう。
しかし健常児だと思われながら、健常児と同じ水準が求められる中で生きる子ども本人はどうでしょうか。
みんなできているのに、自分だけできない
できないのはカッコ悪い、いじめられるかも
みんなとレベルが違いすぎて居場所がない
このように孤独感や劣等感を感じたり、クラスや学校に居場所がなくなっていくかもしれません。
軽度発達障害だからといって、日常生活がスムーズに送れるわけではないのです。
そのため、わが家では周囲から
まめ君って発達障害なの?全然そんなふうに見えない!
と思われることで、少なからずプレッシャーを感じていました。
苦手なことを意識しやすい
発達障害が軽度であることは、健常児でもなく、重度発達障害でもない、言ってしまえば中途半端な部分に位置していることになります。
するとどういうことが起きるのかというと「自分に苦手が多いことを意識しやすい」というループに陥りやすくなります。
軽度発達障害がある場合、健常児と比べると苦手なことが多かったり、できないことが目立ったりします。
しかし、軽度だからこそ
自分ができないことを友達にどう思われてるんだろう
どうして普通にやろうとしているのにできないんだろう

苦手が多いけど、それを気にするくらいには空気が読めたり、賢かったりすることもありますからね
苦手を意識しやすかったり、周囲にどう思われているか感じやすかったりすると、自己肯定感の低下にもつながります。
発達障害には「二次障害」というものがあり、発達障害の特性が原因で自信を喪失し、非行や心の病気の要因になることも。
軽度発達障害の場合、できないことを意識しやすいため、二次障害の発生がさらに懸念されます。

支援が行き届かないことがある
発達障害が軽度であることが原因で、支援が行き届かないケースがあります。
軽度発達障害は、発達障害を診断する検査の項目すべてを満たしていることに変わりないのですが、意外と日常生活には適応しているケースがあります。
軽度だからこそ、定型発達児の中にいても工夫する知識を持っていたり、我慢して周囲に合わせたりすることができる子も。
それが、さらに「発達障害には見えない」状態を作り出してしまうのです。
そうすると、困り感に気付いてもらえないというデメリットが生じてしまうでしょう。
わが家のまめも、小学校入学を控えていた頃に、同様の心配事がありました。

集団生活では、どうしても先生の目が「他害」や「多動」のある子に集中してしまって、まめ君のようなタイプはヘルプサインに気付かれないことが多いかも…
わが家では、小学校入学前に「ヘルプサインの出し方」も学んだのですが、ようやくここで「ヘルプサインの出し方を知っておくことがなぜ大事なのか」が分かりました。

軽度発達障害で、特性に気付かれにくい子ほど、自分でヘルプサインを出すことがとっても大事…!
実際にまめは、先生から「大丈夫?」と聞かれると、反射的に「大丈夫」と答えてしまうところがありました。
もともと内気な性格というのもあったり「わからないことがある」という状態を恥ずかしく思ったりしていたようです。
性格というのは簡単に変えられるものではないので、まめはいまだに堂々とヘルプサインを出すのが苦手です。

さっき何て言っていたのかわからなかったけど、まぁ何とかなるか…
というお気楽思考なため、忘れ物や出し忘れなどもしばしば。
軽度発達障害で支援が行き届かない可能性のある子は、自分でヘルプサインを出すことや、親御さんが同じ情報を共有してもらうことが大切です。

「軽度」だとしても困っています!というのを担任の先生に共有して、一緒に子どもを観察してもらえるのが理想ですね(学校での様子は親から見えないので…)
頑張ればできると親が思ってしまう
発達障害が軽度であることは、わたしたち親も気をつけなければいけない点があります。
それは、
軽度なのだから、頑張れば健常児と同じようにできるのでは?
と親御さんが思ってしまうことです。
正直こう思い始めてしまうと、発達障害を受け入れ始めていても、また「うちの子は発達障害ではないかもしれない」と信じるフェーズに戻ってしまいます。
発達障害をもつ子を育てる親御さんは、以下5つのフェーズを行ったり来たりするステップを辿るといわれています。

わが子の発達障害が判明すると、少なからずショックな時期はあるでしょう。
そこから「うちの子は絶対に違う」と信じたい時期や「事実かもしれない」と悲しみに暮れる時期もあるでしょう。
そして少しずつ慣れていき、最終的に受け入れることができるという説です。
しかし、慣れ始めてもまた「認めたくない」フェーズに戻ることもありますし、そうかと思えば「受け入れた方が楽かもしれない」と悟ることもあるでしょう。
こんなふうに、親御さんが発達障害を認めるまでは、いくつかのステップを行きつ戻りつするといわれているのです。
軽度発達障害の場合、発達障害の特性を持ちながらもなんとか学校に適応していたり、本人が工夫すれば困りごとが軽減されたりするかもしれません。
親御さんがそのような状態を目の当たりにすると、
うちの子、発達障害といわれたけど健常児と変わらないのでは?
やっぱり検査をしたときのコンディションが悪かったのかも
などと、都合の良い解釈をしてしまう可能性があるでしょう。

個人的に、そう信じたくなるのは無理もないし、悪いことではないと思います!
しかし、だからといって「あなたは軽度だから健常児と同じことができるはず」と、無理をさせることがあってはなりませんよね。
親御さんが子どもにプレッシャーをかけてしまう可能性があるのも、軽度発達障害ならではの困りごととして挙げられるでしょう。
発達障害「軽度」の人の特徴

発達障害が「軽度」であると診断された人は、具体的にどのような特徴があるのでしょうか。
わが家のまめが発達障害の診断を受けた際「発達障害と診断はできるが軽度である」といわれたことがあります。
そんなまめの特性やわが家の生活、また一般的な「軽度発達障害」の特徴をふまえて、まとめてみました。
発達障害が「軽度」である場合、
ちょっと変わっている人
という印象を抱かれることが多いとされています。
発達障害には主に「自閉スペクトラム症」「注意欠如多動症」「学習障害」の3種類があります。
これらのいずれか、もしくは複数の障害を併せ持つのが「発達障害」ですが、軽度だとその特性が少しだけ弱まっているように見えます。
そのため、発達障害の特性ほど目立たないのですが「ちょっと変わった人だな…」と思われやすくなってしまうそうです。
参考:産業保健総合支援センター
わが家のまめはというと、まさに「ちょっと変わった子」といわれることが多くあります。
ひと昔前だともっと風変わりな目でみられていたかもしれませんが、現在は障害や個性が多様化していることもあり、際立って孤立することもなくなりました。
変わった子だといわれることはあるものの、年齢とともに自分で空気を読めるようになっています。
しかし、やっぱり発達障害の特性というのは隠しきれるものではありません。

別に隠すものではありませんが、その場面で適切な行動をしようとすると、無意識に特性を隠すような形になりますよね
たとえばまめは小学校1年生のとき、授業中に立ち歩いたりお友達の机まで行って、邪魔をしたりする問題行動がありました。
しかし、年齢とともにそのような行動が減っていきました。
そして、周囲のお友達と同じように、ずっと座っていられるようにもなったんです。
この時点で、まめは「授業中は立ち歩いちゃいけないんだ」と意識できるようになり、自分で自分を制止できるようになっていたのです。

こういうところが「軽度」だといわれる理由なのかな、と感じています
しかし、軽度ではあっても発達障害であることは事実です。
座っていられたとしても、健常児のお友達と同じようにノートをとったり、45分間集中したりできるわけではありません。
そのため「座っていられるようにはなったけど、ノートを全然とっていない」ことなんかも日常茶飯事です。

座っていられるようになっただけで進歩なので、ノートのことまでうるさく言いたくない…というのが正直なところ。
でもノートとらないと授業についていけなくなるし、どうしたものか…
軽度発達障害はこのように、発達障害があるけれどもなんとか、やっとのことで日常生活を回すことができている人が多いようです。
まめの場合は、周囲のお友達よりも約1年遅れのペースで成長していると感じることが多いので、このままスモールステップで変化がみられればいいな、と思っています。
軽度発達障害の特徴には、以下のようなものもあるそうです。

えぇっ!?全然「発達障害」とは関係なさそうな特徴ばかりだよ!

本当にそうですよね!
そのため、生きづらさを感じる人の中には、軽度発達障害者が多く潜在しているのではないかといわれています
大人の発達障害ナビによると、未成年で発達障害と診断された人は225,000人、20歳以降で診断された人は243,000人にも上るのだそう!

意外にも、20歳以降で診断される人のほうが多いんだね!
HR proでは、発達障害の傾向がある人の割合が全体の8.8%であると発表されています。
10人に1人が発達障害である可能性があるのですね。
中でも軽度発達障害は、特性が目立ちやすい発達障害よりも人口が多いのではないかといわれています。
まとめ
発達障害で「軽度」と診断される場合の特徴についてまとめてみました。
特に混同されやすいのは「軽度発達障害」と「グレーゾーン」です。
2つは酷似しているものの、明確な違いがあることが分かりましたね。
医師や専門機関で検査を受けている人は「発達障害ですが軽度です」といわれることはあっても「グレーゾーンです」という診断をされることはありません。
グレーゾーンというのはあくまで、世間一般で使われているだけの通称だと覚えておきましょう。
当ブログでは、発達障害や知的障害、グレーゾーンなどについて体験談をベースに情報をまとめています。
子どもの発達障害や発達の遅れが気になっている人にとって、参考になる情報があることを願います。
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