発達障害のある子どもが思春期を迎えると、親御さんとしては困りごとが増えていくでしょう。
今まで何とかやれていたのに急に荒れ始めたり、突然情緒が不安定になったように感じたり…
また、親子関係が悪化したと感じる家庭もあります。
小学校低学年までは目立たなかった困りごとが、中学生前後から一気に表面化するケースも多いため、親として戸惑いや不安を抱えやすい時期ですよね。
思春期は、身体的・心理的・社会的な変化が同時に起こる非常に複雑な発達段階。
そこに「発達障害の特性」が重なることで、本人の生きづらさが増し、周囲との摩擦も起こりやすくなるのです。
そこでこの記事では、なぜ思春期に発達障害児の困りごとが強くなりやすいのか、どのような変化が起こるのか、家庭や学校でできる具体的な関わり方を解説します。

発達障害は思春期が大変?

発達障害の特性そのものは、幼少期から存在しています。
しかし、思春期になると急に問題が増えたように感じられることがあります。
それは障害が悪化したわけではなく、環境や求められる能力が大きく変化するためです。
思春期特有の発達課題と、発達障害の特性が噛み合わなくなることで、困難が目立ちやすくなるのですね。
人間関係が複雑化する
思春期になると、友人関係は一対一の関係から、空気を読む集団関係へと変化します。
発達障害のある子どもは、暗黙のルールや感情の機微を読み取ることが苦手な場合が多いですよね。
それゆえ、無意識のうちに孤立したり、誤解を招いたりすることがあるかもしれません。
小学生の頃は許されていた言動も
空気が読めない
なんか変わってる…
と、否定的に捉えられるようになるでしょう。
そうすると、本人の自己肯定感が揺らぎやすくなります。
自己認識が深まる
思春期は、自分と他者を比較し始める時期でもあります。
発達障害のある子どもは、なぜ自分が周囲と同じようにできないのか、なぜ努力しても追いつけないのか、違和感を意識するようになるかもしれません。
この自己認識の深まりは成長の一環ではあるものの、周囲から適切な説明や支えがなければ「自分はダメな人間だ」という否定的な自己像につながってしまうのです。

要求水準の上昇に追いつかない
思春期は、周囲から求められる水準が高く高くなっていきます。
特に中学以降は、学習内容が抽象的になり、自己管理能力や計画性も求められるようになりますよね。
発達障害の特性として、ワーキングメモリや実行機能に弱さがある場合、努力しても結果が出にくくなる傾向が。
その結果「怠けている」「やる気がない」などと誤解され、周囲からの評価が下がっていくこともあるでしょう。
本人はちゃんとやりたいと思っているのに、求められるレベルがどんどん上がり、そのギャップが広がってしまうのですね。
思春期の発達障害児の変化

思春期に入ると、発達障害のある子どもには行動面や感情面でさまざまな変化がみられます。
これらは反抗や甘えではなく、環境への適応に必死なサインであることが多いでしょう。
情緒が不安定になる
発達障害児の思春期は、感情のコントロールが難しくなることがあります。
たとえばささいなことで深く落ち込んだり、急に怒りを爆発させたりすることがあるかもしれません。
思春期特有のホルモン変化に加え、発達障害による感覚過敏やストレス耐性の低さが影響し、本人も理由が分からないまま感情が揺さぶられてしまうのです。
外から見ると扱いにくく感じられますが、内面では強い混乱が起きているのですね。

発達障害のない私も、やっぱり思春期は情緒が不安定だったし荒れがちだったかも。
発達障害があるとさらにコントロールが難しくて、本人も辛そうだね
引きこもり傾向が出てくる
発達障害児にとって、集団生活での壁は高いものです。
学校での人間関係や学習のつまずきが積み重なると、登校そのものが大きな負担になることも。
発達障害のある子どもは、限界まで我慢してから突然動けなくなるケースも多いんです。
そのため、徐々に悩みが大きくなっていくというよりも、ある日突然行けなくなるという事態も考えられるでしょう。

これは甘えではなく、心身のエネルギーが枯渇した結果として起こる反応。
起立性調節障害や、出かける直前に体調が悪くなるなど、身体反応が出ることで気づけるかもしれません。
しかしそういった反応が出ず、ただ心が削られていくだけの子もいますから、身近な大人が気づいてあげたいですね。
二次障害のリスクが高まる
思春期はうつ状態や不安障害など、いわゆる二次障害が起こりやすい時期でもあります。
発達障害そのものよりも、自分の特性や性格を分かってもらえない経験や、特性による失敗の積み重ねが原因となり、自分を強く否定することも。
この段階で支援があるかないかが、その後の人生に大きな影響を与えることもあります。
しかし、二次障害が起きた時点で支援を開始して、すべてがうまくいくとも限りません。
二次障害を予防するためにも、発達障害児には早期からの支援導入がなによりも大切なんです。
家庭でどのように関わる?

思春期の発達障害児と向き合う家庭では、これまで通用していた関わり方がうまくいかなくなることがあります。
親自身も戸惑いながら、関係性を再構築していく時期だと捉えましょう。
思春期というのは発達障害の有無に関係なく、親子関係を見直す大事な時期といわれていますよね。
ただ、発達障害があるとさらにかかわり方が難しくなったり、気を付けるべきポイントが定型発達児とは異なったりします。
正論よりも感情を受け止める
思春期の子どもに対して、親として正論を振りかざすのは逆効果になることがあります。
正しいことを説明しても、本人にそれを受け入れるキャパがないかもしれませんし、発達障害児は感情が高ぶっているときに論理的な話を処理することが難しいからです。
まずは「つらかったね」「嫌だったんだね」と感情を受け止めることが大切。
信頼関係を保つ土台になりますので、一次反応としてまず「受け止める」ことを意識しましょう。
過干渉と放任のバランスをとる
思春期になると、どうしても自立を促す必要が出てきます。
しかし発達障害の特性がある場合、完全に任せてしまうと困難が増すこともあるでしょう。
逆に細かく管理しすぎると反発を招き、放置しすぎると不安が増大する…という八方ふさがり状態になる親御さんも多くいます。
ポイントとしては、本人ができる部分と、支援が必要な部分を切り分けることです。
そして、段階的に本人に任せていくという流れを意識しましょう。

これなら思春期に入る前から意識できそうだね!
親の不安を背負わせない
思春期になると、子どもはいっそう親御さんの様子を窺ったり、裏を読んだりできるようになります。
たとえば親御さんが子どもの将来への不安を強く抱えていると、言葉にしなくても子どもに伝わるでしょう。
思春期の子どもは敏感に親の感情を察知するため「自分のせいで親が苦しんでいる」と感じやすくなるのです。
かといって、私たち親だって不安にはなりますし、子どものことを考えているからこその葛藤でもありますよね。
親御さん自身が相談先を持ち、気持ちを整理することも重要な支援のひとつとなるでしょう。

療育や放デイで親御さんたちと情報交換をしたり、支援学級に行っていれば保護者会などで交流の機会が持てることもあります
学校や支援機関と連携する

思春期の発達障害への対応は、家庭だけで抱え込むには負担が大きすぎますよね。
そのため、子どもが通う学校や専門機関と連携し、チームとして支える視点を持つことも重要です。
学校での合理的配慮
思春期になると、小学校では問題なかった問題が出てくることがあります。
中学校以降では先生の対応が不十分になり、合理的配慮が必要になることも。
たとえば授業形式や評価方法も変わっていきますから、それに合わせて合理的配慮の内容も見直す必要があるでしょう。
本人の困りごとを具体的に共有することで、教師側も対応しやすくなるかもしれません。
思春期というとまだ中学生ぐらいであることもありますから、療育や放デイ⇔学校で情報交換や引継ぎができる個別の教育支援計画を活用するのも手です。

この支援計画は1冊のファイルになっていて、これまでの支援計画や記録、またかかりつけや療育の連絡先などが書かれています。
卒業→入学のタイミングや転校などの機会に、親御さんがいちから説明する必要がなく、その冊子を渡すだけでこれまでの支援について情報を引き継げるのですね。
自治体によって呼び名が異なり「支援シート」「特別支援カルテ」「育成ファイル」などさまざまな名前がついています。
専門機関や福祉サービスの活用
思春期は、心療内科や児童精神科への相談が増える時期といわれています。
発達障害と診断されていなくても、本人の状態を客観的に整理し、適切な支援につなげる役割を果たします。
医療は「薬を出す場所」というだけでなく、環境調整の助言を得る場としても重要なんですね。
子どもだけでなく、親御さんがどうかかわっていけばよいかも助言してもらえますので、親子で専門機関を活用しましょう。
将来を見据えた支援
思春期も後半になると、高校進学や就労といった次のステージが視野に入ってきますよね。
この時期から得意不得意を整理し、無理のない進路を一緒に考えることが大切です。
将来の安心につなげるためには、思春期の対応をしながらも将来のビジョンも同時進行で考えていくとよいでしょう。
支援とは今を乗り切るだけでなく、この先を生きやすくするという視点が必要なんですね。
発達障害児の思春期を乗り越えるために

発達障害のある子どもにとって、思春期は確かに困難が増えやすい時期。
しかし適切な理解と支援があれば、自己理解を深め、大人へのステップとして意味のある時間にもなるんです。
発達障害を持たない子に比べると、フォローやケアが多くはなりますが、おおよその傾向を押さえておくだけで親御さんの心の準備ができるでしょう。
困難は成長のサイン!
トラブルや反発が増えると親御さんは困り果ててしまいますよね。
しかし、それは本人が自我を確立しようとしている証でもあります。
問題行動だけに目を向けるのではなく、その背景にある成長のプロセスを見つめることを意識しましょう。
困難な時期だからこそ、支えられた経験は将来の安心感につながりますよ。

指導しようとするよりも、親子で一緒に乗り越えていく意識が大事だね!
障害について伝えることも大切
発達障害の特性を、年齢に応じて本人に伝えることも大切です。
そもそも発達障害は隠すべきものではありませんし、本人が自分の性格や特性を理解するうえでは大事なステップになります。
特に、思春期以降の自己肯定感を守るうえで重要なイベントとなるでしょう。

小さなころは、周囲と比べてできないことが多かったかもしれませんし、失敗体験が積み重なってふさぎ込むこともあったかもしれません。
しかし、思春期になり「できない理由」が分かると、必要以上に自分を責めすぎず、工夫する視点を持てるようになります。
もちろん伝え方には配慮が必要ですが、発達障害について隠し通すことが必ずしも良い結果を生むとは限りません。

わが家は思春期前に発達障害・知的障害については本人に話しています
まめはもともとグレーで、その後やっと診断が下りたということもあり、周囲と自分の違いにうすうす気づいていました。
支援学級に転籍するころになると、発達障害について話さざるを得ない状況になりました。

検査もたくさんあって、なんでこんなにやらなくちゃいけないの?と思ってた~

手帳を取得するためだったり、学校が変わるためだったり、なぜその検査をするのかを説明するために、発達障害についても明かす必要がありました
支援は長期スパンで考える
思春期の困難というのは、一時的に強く表れることがありますが、それが一生続くわけではありません。
今は立ち止まっているように見えても、適切な環境が整えば再び動き出せる力を持っています。
焦らず、比べず、その子のペースを尊重する姿勢が、最終的に本人の自立を支えることになるでしょう。
そのため、支援を受ける際にも「今この瞬間をどうにかする」という見方ではなく、将来どうなってほしいかというビジョンを踏まえて考えると良いでしょう。
まとめ
発達障害のある子どもにとって、思春期は特性が目立ちやすく、生きづらさが増す時期です。
しかしそれは障害が悪化したわけではありません。
環境や要求の変化によるものが大きいといえるでしょう。
子どもは家庭の中だけで生きるのではなく、社会のなかで生きていきます。
そのため、家庭だけで抱え込まず学校や支援機関と連携することが大切なんですね。
本人の感情とペースを尊重しながら、思春期の経験をその後の人生につなげていくイメージを持ちまましょう。
困難な時期だからこそ、理解と支援の積み重ねが、将来の安心につながっていきますよ。




















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