子どもの発達や知的能力を調べる際、医療機関や教育相談の現場では「知能検査」と「発達検査」という2種類の検査が使われています。
名前は似ていますが、測っているものや結果の読み方には違いがあります。
この記事では、これら両者の違いをわかりやすく整理。
日本で広く使われている代表的な3つの検査(WISC、田中ビネー、新版K式)について、それぞれ何がわかるのか、結果をどう見ればよいのかを解説します。

「知能検査」と「発達検査」の違い

まず、知能検査と発達検査の違いについて明確にしておきましょう。
「知能検査」は、言語理解や推理力、記憶力、処理速度といった知的な能力を測定し、年齢ごとの平均と比較して「知能指数(IQ)」という数値で表す検査。
主に学齢期以降の子どもや大人を対象に、得意・不得意の認知特性を詳しく把握する目的で使われます。

一方「発達検査」は、運動・認知・言語・社会性など子どもの発達全般を多面的に捉える検査です。
乳幼児期から対象にできるものが多く、IQという1つの数値だけでなく、領域ごとの発達の進み具合を「発達年齢(DA)」や「発達指数(DQ)」として示します。

つまり、言葉どおり知能検査は「知的能力が頭の中でどうなっているか」を細かく分析するのに向いており、発達検査は「全体的にどう成長しているか」を追いかけるのに向いている、というイメージですね。

実際の現場では、子どもの年齢や相談の目的に応じて使い分けられたり、組み合わせて実施されたりします。
乳幼児期に使われるのはどっち?
乳幼児期(0歳〜就学前)は、言語による応答が難しい年齢であることもありますよね。
そのため、遊びや動作の観察を通じて発達を把握できる「発達検査」が中心になります。
代表的なものが新版K式発達検査で、姿勢・運動、認知・適応、言語・社会という3つの領域から、子どもの発達の凹凸を把握できます。
このほか、遠城寺式乳幼児分析的発達検査法や津守式乳幼児精神発達診断法、KIDS(乳幼児発達スケール)なども、保護者からの聞き取りを中心に簡便に実施できる検査ですよ。
しかし、知能検査を乳幼児期に用いるケースもあります。
たとえば「田中ビネー知能検査」は2歳から実施可能なため、この時期から用いることができるのです。
ここまででご紹介した発達検査を、図解でまとめてみましょう!

学齢期に使われるのはどっち?
小学校入学以降は、学習面での困りごとや支援の必要性を判断する目的で、知能検査が中心的な役割を持つようになります。
代表格はWISC(児童用ウェクスラー式知能検査)で、5歳から16歳11か月までを対象に、言語理解や推理力、記憶力、処理速度といった認知能力を細かく分析できます。
さきほどご紹介した「田中ビネー知能検査」も学齢期まで継続して使われ、特別支援学級や通級指導の判定資料として用いられることが多い検査です。
あわせて、K-ABC IIのように認知処理過程と学習の習得度を分けて測定できる検査が選ばれることもあります。

まめはWISCも田中ビネーも受けました!どちらも近い数値が出たので、信頼できる結果だと感じました

WISCは1時間半くらいかかったし、田中ビネーは2時間以上かかってクタクタだったよ…
こちらも、わかりやすく図解にしてみました。

成人期に使われるのはどっち?
16歳以降は、さきほどご紹介したWISCの仲間である「WAIS(成人用ウェクスラー式知能検査)」が標準的に使われます。
構成や測定領域はWISCと共通する部分が多く、就労支援や障害者手帳の判定、医療機関でのアセスメントなどに活用されるそうです。
田中ビネー知能検査も成人期に用いることができますが、14歳以上は精神年齢を算出しません。
かわりに、偏差知能指数(DIQ)という指標に切り替わる仕組みになることで、成人にも対応できるようになっているんです。
偏差知能指数(DIQ)とは?
同じ年齢の集団の中での相対的な位置を、統計的に表したIQのこと。同年齢の平均を100、標準偏差を15~16として換算します。
代表的な検査

ここからは、日本で特によく使われる3つの検査について、それぞれ詳しく見ていきます。
図解でまとめていますので、この記事をブックマークしておけば「何だったっけ?」と思っても、見返すことができますよ。
WISC

WISC(ウィスク)は、ウェクスラー式知能検査の児童版です。
年々アップデートされており、現在の最新版はWISC-Vとよばれています。
対象年齢は5歳0か月から16歳11か月で、学校や発達支援センター、児童相談所などで広く実施されています。
子どもの考える力や覚える力などを複数の角度から調べる検査で、結果を組み合わせて、全体的な知的能力の目安となる「全検査IQ」が算出されます。
現在の最新版はWISC-Vですが、前身のWISC-IVとは明確な違いがあります。
WISC-IVでは「知覚推理指標」という1つの指標だった部分が、WISC-Vになると「視空間指標」と「流動性推理指標」に分かれるのです。
これにより、より細かく能力を分析できるようになった点が大きな変更点でした。
WISCでわかること
WISCの最大の特徴は、子どもの中での得意・不得意のばらつきが見える点です。
IQという1つの数値だけでなく、言語理解・視空間・流動性推理・ワーキングメモリー・処理速度という5つの領域ごとの得点を比較することができるのです。
細かく結果が分かれていることで、この子はどの能力が高く、どの能力が低いのかを把握できます。

知識がない私でも見やすい結果で、まめの強み・弱みが一目でわかりました!
小3で受けたのですが、幼児期に苦手とされていた部分の点数が意外と高くて「成長してる!」と実感できたのも嬉しかったです
これにより、たとえば「言葉の理解は得意だが、聞いた情報を一時的に覚えておくのが苦手」といった具体的な特性が見えてきます。
これを単に「記憶の保持が苦手」とか「物忘れが多い」という単純な認識で片付けてしまうと、その奥にある本当の強み「言葉はちゃんと理解している」という点が置き去りにされてしまいますよね。
これが繰り返されると、学校でどのようにフォローしたらいいのか、どんな放デイを選んだらいいのか、見極め方がズレてしまうかもしれません。
WISCからわかる結果は、学習方法の工夫や授業での配慮、家庭でのサポート方法を考える手がかりになるのですね。
また、WISCの結果は子どもの能力の優劣を決めるためのものではありません。
学校生活でつまずきやすい部分を予測し、適切な支援につなげるための「地図」として活用するものだと理解しておきましょう!
WISCの検査結果の見方
検査結果を見るときにまず目が行きがちなのが、全体的な知的水準を示すIQではないでしょうか。
IQは、クイズ番組が流行したころから頭脳派の芸能人のIQが紹介されることがあったりして、実際にIQを測ったことがない私たちにとっても身近な数値ですよね。
IQとは、言語理解、流動性推理、視覚空間、ワーキングメモリー、処理速度の各領域から合算された数値。
子どもの「全般的な知的能力」の目安となります。
平均は100に設定されているため、100前後が出れば平均的な知能を持っているということになります。
しかし、IQが高いか低いかだけに注目するのはまた違っていて、それだけでは子どもの特性は十分に見えないのです。

まめの先生も「IQだけですべては測れない。IQが低い子でも、実生活を見ると上手なことや得意なことがたくさんあったりする」とおっしゃっていました
WISCの結果を活かすうえで本当に大切なのは、5つの主要指標のバランスを見ることです。
とくに、5つの指標間の差が大きい場合もあります。
その場合、IQという1つの数値だけでは実態を表しきれないのです。
そのためIQ全体よりも各指標の結果から、その子どもの中でどの能力が高く、どの能力が低いのかを見ることが重要だとされていますよ。
また、各指標には「パーセンタイル順位」が併記されることが多く、これは同年齢集団の中での相対的な位置を直感的に把握するのに役立ちます。
検査結果は専門用語や数値が多く並ぶため、保護者だけで解釈しようとすると難しいかもしれません。
実施した機関に質問しながら、少しずつ理解を深めていきましょう!
田中ビネー

田中ビネー知能検査は、フランスのビネー式知能検査を日本向けに標準化した、日本で長い歴史を持つ知能検査です。
現行の主要版は「田中ビネー知能検査V」で、対象年齢は2歳から成人まで幅広くカバー。
WISCは5歳からですが、田中ビネーは2歳という低年齢から実施できる点が、大きな違いの1つでしょう。
検査では、年齢ごとに用意された問題に取り組み、できた・できないを〇×で記録していきます。
実際の年齢に該当するレベルから始め、問題をこなせた年齢級における点数の合計から精神年齢を算出。
問題が解けなかった年齢級と、実際の年齢の比から知能指数が割り出される仕組みになっています。
なお、後継版として田中ビネー知能検査Ⅵ(ビネーシックス)も登場しており、今後さらに普及していくと考えられていますよ。

田中ビネーとビネーシックスはどう違うの?
ビネーシックスでは、従来の田中ビネーと比べて現代の子ども~成人の発達に即した尺度へと変化しています。
時代に合わせて内容を取捨選択し新しい問題が追加されたり、精神年齢指標のほかに、新たにDIQ(偏差知能指数)が採用されたりしています。
田中ビネーでわかること
田中ビネー知能検査は、子どもの知的発達が実際の年齢相応の水準にあるかどうかを総合的に把握する検査です。
WISCのように複数の指標に分けて細かく分析するというよりも、全体としての知的発達の到達度を1つの軸でとらえる検査といえます。
問題は〇×で採点されるため、どの年齢級の課題でつまずいたかが一目でわかりやすいのも特徴。
得意・不得意の分野を直感的に把握しやすいため、支援につなげたり手帳を取得したりする際にも、目安にしやすいんです。
福祉サービスに関する判定や発達支援、教育相談など、さまざまな支援・相談の場におけるアセスメントツールとして活用されていますよ。

まめも、支援学級に転籍するにあたり療育手帳を取得しましたが、そのときに受けたのが田中ビネーでした
田中ビネーの検査結果の見方
田中ビネー知能検査の結果は、年齢によって表し方が異なります。
2歳から13歳までは精神年齢と知能指数(IQ)で表され、14歳以上は偏差知能指数という異なる指標で表されます。
2歳から13歳の場合、まず精神年齢が算出され、これを実年齢と比較することで知能指数(IQ)が計算されます。
計算式は「精神年齢 ÷ 生活年齢 × 100」という比率IQで、たとえば5歳の子どもが6歳レベルの問題まで解ければ、6÷5×100でIQ120と算出されるわけですね。
ここで注意したいのが、田中ビネーのIQとWISCのIQは算出方法が異なるという点です。
WISCの偏差IQは平均は100、標準偏差が15になるように調整された正規分布に基づいて計算されます。
それに対し、田中ビネーの比率IQはそのような調整がされておらず、理論上は平均値が100を超えることもあるのだとか。
そのため、同じ子どもが両方の検査を受けても、IQの数値が一致しない場合があるということです。

ぼくの場合はWISCと田中ビネーで、出たIQの差はたったの1だったよ
特別支援教育の就学判定の場では、検査名を区別せずにIQの数値だけで判断されてしまうケースもあります。
そのため、結果を提出する際にはどちらの検査によるものかを明記してもらいましょう。
IQの判定区分の目安としては、平均を100としたとき、80以上が健常領域とされます。
そして、71〜79が知的境界領域とよばれます。
51〜70が軽度知的障害、36〜50が中度知的障害、21〜35が重度知的障害、20以下が最重度知的障害です。
これはあくまで目安であり、育ってきた環境などの背景も踏まえて総合的に判断されます。
知的境界領域って?
知的境界領域とは、知能指数(IQ)が70から84の範囲にあり、知的障害(IQ70未満)と平均的知能の間に位置する状態のことです。
なお、田中ビネー知能検査Ⅵ(ビネーシックス)からは、少しの変更点が生じています。
2歳0か月〜13歳11か月の対象者について、精神年齢はそのままですが、IQが「比例IQ」から「偏差IQ」に変わってきているそうなんです。
偏差IQはどちらかというとWISCに近い方式で「同年齢集団内での位置」を表すものです。
つまり、従来の田中ビネーでは「年齢に対するIQ」を出していたのが、ビネーシックスからは「同年齢の人たちの中での相対的位置」を出すようになっているんですね。

WISCと田中ビネーで違った方式があることで用途も幅広くなるのに、どうして似せてしまうんだろう?
せっかくWISCで偏差IQを、田中ビネーで比例IQを算出できて、目的や用途によってどちらの検査が適しているのか選べる状態だったのに、似せてしまうのは非合理的なように思えますよね。
実は検査の多様性よりも、IQという指標を標準化することを優先した結果なのだそうです。
従来、田中ビネーではWISCと異なる指標を提供できることが強みであり、そのおかげでさまざまな用途で双方の検査が用いられてきました。
しかし、田中ビネーのIQ80とWISCのIQ80は統計的には同じ意味ではない、という点が問題視されました。
そして、世間一般的に表現する「IQ」というのは、まさにWISCが示す「偏差IQ」を指すのです。
このように、一定の標準偏差を持つ標準得点である偏差IQを「標準」として、田中ビネーのIQ算出方法のみ改訂することになったのですね。
新版K式

続いては、新版K式発達検査です。
新版K式発達検査は、1951年に京都市児童院で開発されて以来、日本で長く使われてきた発達検査です。
現行版は再標準化を経た「新版K式発達検査2020」で、対象年齢は生後100日から成人までと非常に幅広いんです。
検査時間は15分から60分程度の、個別式検査となっています。
検査では、姿勢・運動領域、認知・適応領域、言語・社会領域という3つの領域で、合計339項目のテストがおこなわれます。
しかし、これらすべての項目を実施するわけではなく、子どもの年齢や発達段階に応じて必要な範囲が選ばれる仕組みだそうです。
新版K式でわかること
新版K式発達検査の特徴は、運動・認知・言語社会性という複数の領域から、子どもの発達を多面的に観察できる点です。
検査者が子どもにさまざまな課題を提示し、道具や絵カードを使いながら、子どもがリラックスして自然な反応を示せるよう配慮されます。
さらに、単に「できる・できない」を見るだけでなく、課題への取り組み方や反応の仕方、途中のつまずきや工夫など、検査中の行動そのものも観察情報として記録されるそう。
これは、発達特性を理解する手がかりになるからだそうですよ。
0歳代から実施できるため、言葉でのやり取りが難しい乳幼児の発達を把握するのにも適しています。
療育や保育・教育現場での支援方針を検討する際などに、広く活用されてきました。
新版K式の検査結果の見方
結果は、以下4つの区分で表示されます。
- 姿勢・運動領域
- 認知・適応領域
- 言語・社会領域
- 全体的領域
これらが、それぞれ発達年齢と発達指数という2つの指標で示されます。
発達年齢とは、子どもの発達が何歳何か月相当の水準にあるかを表す指標です。
たとえば実年齢が3歳の子どもの発達年齢が2歳6か月と算出された場合、その領域では実年齢よりやや緩やかな発達段階にあることがわかります。
そして発達指数とは、発達年齢を実年齢で割って100をかけた数値で算出されます。
100を基準とし、どの程度上下にずれているかを見ることで、発達のバランスを数値的に把握するためのものです。
新版K式の結果を読むうえで重要なのは、全体的領域の「DQ」という1つの数値だけでなく、領域ごとのDQの差に注目することです。
たとえば認知面では年齢相応でも、言語面では半年程度の遅れが見られることもあります。
領域間の違いから、その子の個性や得意・不得意を具体的に把握できるかもしれないのですね。
ただし領域間に差があったり、DQが低めに出たりしても、それ自体が発達障害の診断を意味するものではないということも、頭に入れておきたい部分です。
DQはあくまで発達の目安を示す数値であり、診断を確定するものではないからです。
検査中の行動や家庭・園での様子とあわせて、総合的に判断されるので、焦って判断しないようにしましょう!
また、発達には得意・不得意の凹凸があることが一般的であり、それは障害があってもなくても同じ。
大切なのは得意・不得意の差があることよりも、その特徴をどう支援に活かすかという視点です。
また、その日の体調や緊張・眠気によって結果が変動することもありますよね。
そのため1回の結果だけで決めつけず、必要に応じて再評価が行われることもありますよ。
まとめ
この記事では、知能検査と発達検査についてメジャーな3つを中心に、解説してきました。
もう一度、簡易的な表にしてまとめてみましょう。
| 検査名 | 種別 | 対象年齢 | 主な結果指標 |
|---|---|---|---|
| WISC-V | 知能検査 | 5歳0か月〜16歳11か月 | 全検査IQ 5つの主要指標 |
| 田中ビネーV | 知能検査 | 2歳〜成人 | 精神年齢・IQ 偏差知能指数 |
| 新版K式発達検査2020 | 発達検査 | 生後100日〜成人 | 発達年齢 発達指数 |
どの検査にも共通して言えるのは、結果の数値は子どもを評価・判定するためのものではないということ。
その子に合った支援や関わり方を考えるための、手がかりにすべきだという点です。
検査結果を受け取った際は、数値の高低だけにとらわれないようにしましょう。
領域ごとのバランスや検査中の様子も含めて、実施した専門機関とともに丁寧に読み解いていくことが大切ですよ。







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