文字を読むのに時間がかかったり、書くことが極端に苦手だったり…
そんな子どもの学習面での困難に気づいたとき、ディスレクシアなのか、それともLDなのか、あるいは別の問題なのか、判断に迷ったことがありませんか?
どちらも学習に関わる困難を指す言葉ですが、実際には異なる概念であり、混同されやすいんです。
ディスレクシアは読み書きに特化した困難を指し、LDは学習障害全般を指す広い概念です。
しかし、日本と海外では用語の使われ方が異なることもあり、正確な理解が難しくなっています。
適切な支援を受けるためには、これらの違いを理解し、子どもの困難の本質を見極めることが重要。
そこでこの記事では、ディスレクシアとLDの違いを明確にし、それぞれの特性や支援方法について詳しく解説していきます。

ディスレクシアとLDの違いは?

ディスレクシアとLDという言葉は、学習面での困難を表す際に使われます。
しかし、その範囲や定義には違いがあるんです。
また、国や地域によって用語の使い方が異なることも、混乱を招く要因となっているようです。
正しく理解するためには、それぞれの定義を明確にし、両者の関係性を把握しましょう。
子どもの困難を適切に捉え、必要な支援につなげるための基礎知識として、これらの概念を整理することが大切ですよ。
ディスレクシアの定義
ディスレクシアは「読字障害」とも呼ばれ、知的能力や学習機会には問題がないにもかかわらず、文字の読み書きに特異的な困難を示す状態です。
国際ディスレクシア協会の定義では、音韻処理の困難さを中心とした神経学的な原因による学習障害の一種とされています。
文字と音を結びつけることが難しく、流暢な読みや正確な綴りに困難が生じるようです。

ディスレクシアの子どもは、文字を見てもすぐに音に変換できなかったり、似た形の文字を混同してしまったり、行を飛ばして読んでしまったりします。
しかし知的能力は平均的、またはそれ以上であることが多いのだとか。
つまり、聞いて理解する力や思考力は優れているにもかかわらず、読み書きだけが極端に苦手という状態が見られるのですね。
参考:国立成育医療センター
LDの定義
LDは、英語で「Learning Disabilities」といいます。
日本語で「学習障害」と訳され、知的発達に遅れはないものの、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するといった特定の学習領域に著しい困難を示す状態を指します。
日本の文部科学省の定義では、全般的な知的発達には問題がないにもかかわらず、特定の能力の習得と使用に困難がある状態とされています。

LDは発達障害の1つなんだけど、唯一「知的障害を伴わない」というのが条件になります
実はLDとは、1つの症状ではなく、複数の異なるタイプを含む包括的な概念なんです。
読字障害、書字障害、算数障害など、困難の現れる領域によって分類されます。
また、1人の子どもが複数の領域に困難を抱えることもあるそうですよ。
全般的な知的能力と、特定の学習能力との間に大きな差があることが特徴。
それにより、本人が生きづらさを感じやすい発達障害でもあるんですね。
参考:LITALICOジュニア
ディスレクシアとLDの関係
ディスレクシアはLDの一種であり、LDという大きなカテゴリーの中に含まれる特定のタイプということになります。
つまり、すべてのディスレクシアはLDですが、すべてのLDがディスレクシアというわけではないのですね。
LDには読字障害であるディスレクシアの他に、書字障害や算数障害なども含まれます。
ただし海外、特に英語圏では「ディスレクシア」という用語が広く使われ始めています。
日本でいう「LD全般」という意味合いで使われることもあるそうなので、日本でも混同されやすくなっているのですね。
また、日本でも専門家や支援機関によって、用語の使い方に若干の違いがあります。
診断や説明を受ける際には、どの範囲を指しているのか確認することが必要ですね。
ディスレクシアの困りごと

ディスレクシアは読み書きに特化した困難であり、その現れ方には特徴的なパターンがあります。
単に読むのが遅いだけでなく、文字認識や音韻処理に根本的な困難を抱えているため、通常の学習方法では改善が難しいのです。

頑張っても頑張っても、なかなか覚えられないしわからないという辛さがあるよね
ディスレクシアの特性を正しく理解することで、単なる努力不足や怠けではないことが分かるでしょう。
そして、適切な支援方法を選択できるようになります。
早期に気づいて対応することが、学習面だけでなく本人の自尊心を守ることにもつながるのですね。
「音韻認識」の困難
ディスレクシアの中核的な困難は、音韻認識の弱さにあります。
音韻認識とは、言葉を音の単位に分解したり、音を組み合わせて言葉を作ったりする能力です。
たとえば「さくら」という言葉が「さ」「く」「ら」という三つの音からできていることを理解し、操作する力。
これが、ディスレクシアの子どもは弱いのです。
この音韻認識の困難により、文字と音を対応させることが難しくなります。
ひらがなの「あ」が「あ」という音を表すという対応関係を覚えることに時間がかかり、一度覚えても忘れてしまうのだそう。
結果として、文字を見て音に変換する作業、つまり読むという行為が非常に負担の大きいものになるのですね。

ひらがなの「あ」を見て「あ」と発音するんだ、ということを覚えられないとなると、長い文章やカタカナ、漢字が含まれると体調を壊してしまいそうだ…
読みの流暢性の問題
ディスレクシアの子どもは、一文字ずつは読めても、スムーズに文章を読むことが難しいという特徴があります。
一つ一つの文字を確認しながらゆっくり読むため、読むスピードが極端に遅く、内容を理解する前に疲れてしまうことも。
どこを読んでいるのかわからなくなってしまうので、同じ行を繰り返し読んだり、行を飛ばしてしまったりする子もいます。
また、読むことに注意とエネルギーを大量に消費するため、内容の理解が追いつかず「読めてはいるけど理解はしていない」という形で特性が出現する場合があります。
たとえば、聞くだけなら理解できる内容でも、自分で読むと意味が分からなくなってしまうのです。
音読は特に苦手で、クラスで順番に読む場面などでは、強い不安やストレスを感じることもあるでしょう。
書字の困難
読みと同様に、書くことにも大きな困難があります。
音を文字に変換することが難しいため、聞いた言葉を正しく書き取ることができません。
似た音の文字を間違えたり、促音や拗音を正しく表記できなかったり、文字の形を正確に書けなかったりするでしょう。

また、文字を書くこと自体に多大な努力を要します。
それだけで精一杯になってしまい、そこから「文章を組み立てること」まで手が回らない子もいるでしょう。
頭の中では豊かな考えを持っているのに、それを文字で表現することができず、本来の能力が評価されないという状況が生じやすいのですね。
そのため、学校で板書を写すことも困難で、授業についていけない原因となることがあります。

ぼくも板書は大の苦手だったよ。
支援学級では板書の内容をずっと残しておいてくれるけど、通常学級だとすぐに黒板を消されてしまうから、結局何も書けなかった…なんてことも。
LDの種類を知っておこう

LDは読み書きだけでなく、さまざまな学習領域に現れる可能性があります。
1人の子どもが複数の領域に困難を持つこともあれば、特定の1つの領域だけに困難が限定されることもあり、その現れ方は多様なんです。
子どもの困難がどの領域にあるのかを正確に把握することで、適切な支援方法を選ぶことができるでしょう。
LDのタイプによって、必要な配慮や指導法が異なります。
そのため、個別のアセスメントが重要になりますよ。
読字障害(ディスレクシア)
LDの中で最も多く見られるタイプが、読字障害です。
これが、この記事でご紹介している「ディスレクシア」に該当します。
先述したように、文字の認識や音韻処理に困難があり、流暢な読みができない状態のことをいいます。

日本語の場合、ひらがな、カタカナ、漢字それぞれで困難さが異なることも。
漢字は表意文字であるため、音韻処理の問題があっても比較的現れにくいといわれています。
また、独特の形で覚えることができる場合もあるそうですよ。
一方、ひらがなやカタカナは表音文字であり、音と文字を対応させることが必須。

このため、ひらがなとカタカナはディスレクシアの影響を強く受けるといわれています。

漢字は絵文字や記号のように、形でなんとなく覚えられるけど、ひらがなとカタカナは文字と音をリンクさせるというひと手間がかかるんだね
このように、文字の種類によって得意不得意が分かれることも、ディスレクシアの特徴なんですね。
書字障害(ディスグラフィア)
書字障害は、文字を書くこと自体に困難がある状態です。
読むことはある程度できても、書くことが極端に苦手という場合もあります。
文字の形を正確に書けなかったり、鏡文字になったりするのがよくある特徴。
また、筆圧のコントロールができない、マス目に収められないという困難がみられることも。

運筆の問題だけでなく、綴りの問題が発生することもあるでしょう。
音を正しい文字列に変換できないケース、漢字の細かい部分を間違えるケース、送り仮名を正しく書けないケースなどです。
書字障害がある子どもは、必然的に書くことへの苦手意識が強くなります。
そのため、授業自体は理解していても、筆記試験で本来の理解度が測れないという問題が生じてくるのですね。
参考:ブレインクリニック
算数障害(ディスカリキュリア)
算数障害は、数の概念の理解や計算に特異的な困難がある状態です。
数の大小が理解できない、簡単な計算ができない、数字を書き間違える、文章題の意味が理解できないなどの特徴があります。
小学生でいうと、九九を覚えることが難しかったり、覚えてもすぐに忘れてしまったりするケースがあるようです。

算数障害には、数そのものの概念が理解できないタイプと、手続き的な計算ができないタイプ、空間的な認識の問題があるタイプなど、さらに派生します。
図形問題が特に苦手、時計が読めない、お金の計算ができないなど、日常生活にも影響が及ぶことも。
簡単な計算などの知識は、生きていく上で必要なことも多いですよね。
そのため、困りごとを把握し適切な支援につなげることが、本人の生きやすさにもつながっていきますよ。
ディスレクシアやLDの診断方法

ディスレクシアやLDを正確に診断するためには、専門的な評価が必要です。
単に学習の遅れや苦手があるだけでは、診断基準を満たしているとはいえないからです。
知的能力と学習能力の間に「有意な差」があることを、医師や専門家が確認する必要があります。

適切な診断を受けることで、学校での配慮や支援を受けやすくなるでしょう。
そして子ども自身も、自分の困難を理解し受け入れるハードルが低くなるかもしれません。
早期発見と早期支援が、その後の学習や自尊心に大きく影響するため、気になる兆候があれば早めに専門機関に相談しましょう。
医療機関での診断
小児科、児童精神科、発達専門外来などの医療機関では、詳細な問診と各種検査を通じて診断が行われます。
知能検査で全体的な認知能力を測定し、学習到達度検査で実際の学習レベルを確認するという流れです。
両者の間に有意な差があり、他の要因で説明できない場合に、LDやディスレクシアと診断されます。
診断のプロセスでは、視覚や聴覚に問題がないか、適切な学習機会があったか、情緒的な問題や環境要因はないか、などもあわせて確認されます。
これらは「除外診断」とよばれ、いずれかに該当するとディスレクシアやLDではない可能性が出てくるのですね。
そして、神経発達的な特性(=発達障害)による学習困難であることが確認されると、必要な配慮や支援についての医学的な意見書が作成されることもあります。

実はまめも、当初はLDを疑われていました。
しかし、そのあとに受けたWISCの結果により「知的障害」であることが発覚。
知的障害の診断が下りた=LDではないという証明になるので、まめはLDではなく知的障害児としての支援を受けることになりました
心理検査による評価
公認心理師や臨床心理士による心理検査では、より詳細な認知特性のプロフィールが明らかになります。
たとえば「WISC知能検査」などを用いて、言語理解、知覚推理、ワーキングメモリ、処理速度といった認知能力の各側面を測定。
「どの領域に強みや弱みがあるか」を、総合的に把握できるでしょう。

また、読み書きや計算の習得状況を詳しく調べる「学習到達度検査」や、音韻認識能力を測定する検査なども実施される可能性があります。
これらの検査結果を総合的に分析することで、どのような支援が効果的かを具体的に示すことができるのですね。

検査は子どもの負担にならないよう、複数回に分けて実施されることもあります

ぼくが受けた検査の中には2時間以上かかるものもあって、もうクタクタだったよ…
学校での観察
学校での学習状況や行動の観察も、診断において重要な情報源となります。
担任や特別支援教育コーディネーターからの情報により、実際の学習場面でどのような困難があるか、どのような支援が効果的かが分かるでしょう。
たとえばテストの答案や作文、ノートなどの学習成果物も、評価の材料となります。

学校からの評価が一番わかりやすいものとして、私は成績表を毎回持参していました
可能であれば、医療機関や心理相談機関での評価結果を学校と共有し、協力して支援計画を立てましょう。
学校での合理的配慮、通級指導教室の利用、特別支援学級での学習など、子どもに最適な教育環境を選ぶことができます。
それらを検討する際にも、専門的な評価結果が重要な判断材料となるでしょう。

診断があっても、支援学級や通級に空きがなく、しぶしぶ通常学級に行かなければいけないケースも。
専門家の診断書や紹介が、強力な後ろ盾になるかも
効果的な支援方法とは

ディスレクシアやLDがあっても、適切な支援と本人に合った学習方法を見つけることで、着実に力をつけることができます。
ただ、一般的な指導法では効果が上がりにくいでしょう。
特性に応じた、個別の配慮と工夫が必要になります。
支援の基本は、困難な部分を補いながら、得意な部分を活かすこと。
できないことを無理に訓練するのではなく、別の方法でできるようにする代償手段を取り入れましょう。

ディスレクシアやLDがあると、学習面で自信を失いがち。学習意欲を維持して、自尊心も守ってあげたいよね
それではここから、ディスレクシアやLDに適した支援をそれぞれご紹介します。
ディスレクシアへの支援
ディスレクシアの子どもには、多感覚を使った読み書き指導が効果的といわれています。
「多感覚」とは、視覚、聴覚、触覚、運動感覚を組み合わせて文字を学ぶ方法のことです。
また、英語圏でよく行われている「フォニックス指導」と呼ばれる、音と文字の対応を系統的に教える方法も有効とされています。
1つずつ丁寧に、繰り返し学習することで、定着が期待できるでしょう。

また、読むことの負担を軽減する方法もあります。
たとえばテキストを拡大したり、行間を広く取ったり、すべての漢字にルビをふったり。
読むのが困難で、苦痛さえ感じてしまう場合には、音声読み上げソフトも使用できるでしょう。
タブレット端末やパソコンを使えば、音声で読み上げてくれるため、読みの困難を補いながら内容を理解することができますね。
ディスグラフィアへの支援
ディスグラフィア(書字障害)がある場合は、そもそもの書く量を減らす配慮が必要です。
板書を全て写すのではなく、重要な部分だけをメモしたり、メモは取らずに写真を撮ったりプリントを配布したりすることができます。
また、手書きに代わる方法として、パソコンやタブレットでのタイピング、音声入力の活用も効果的でしょう。
書く練習をする際は、なぞり書きや写し書きから始めましょう。
そして段階的に難易度を上げていくことで、心理的負担を軽減することができますよ。
ほかにも、マス目の大きいノートや、薄い補助線のあるノートを使うと、視覚的なガイドとして活用できます。
難しいことをさせようとせず、完璧を求めず、少しずつ改善していければ大丈夫です。
ディスカリキュリアへの支援
ディスカリキュリア(算数障害)には、具体物を使った操作活動を取り入れましょう。
具体物とは、数を数える際に使うおはじきやブロックなどのことです。
そのほか、視覚的な図やイラストを使って、文章題の意味を理解しやすくする工夫も効果的でしょう。
計算練習は、手順を書いたカードを用意したり、電卓の使用を認めたりすることも良いとされています。

電卓がOKなのは意外だね!
電卓の使用を許可することで、計算そのものよりも「数学的な思考力」を評価できるようになるのだそうです。
同じように、九九の表など一見「答え」を見せるような学習法でも、学習の負担を軽減し、本質的な理解に集中できることが期待されているんですよ。
ディスカリキュリアの中には、ワーキングメモリが弱く計算の途中で数字を忘れてしまったり、繰り上がりや繰り下がりで混乱したりすることがあります。
ここで時間を取られてしまうと、答えに辿り着けないまま本人の集中力や計算力だけが低下することに。
九九表や電卓を使うことは、途中計算などを忘れてしまったときに思い出す作業として、役立つのです。

一見ズルだと思ってしまうこの感覚が、LDの適切な支援を妨げることになるね
共通する支援の考え方とは
ディスレクシアやLDのどのタイプでも共通する支援の考え方は、合理的配慮を提供することです。
テストの時間延長を認めたり、ほかにも別室受験、問題の読み上げ、解答方法の選択など、困難を補う配慮をすることが重要。
こうすることで、本来の能力を発揮できるようになります。
これは不公平な優遇ではなく、公平な機会を保障するための必要な配慮だということを覚えておきましょう。
合理的配慮を「ずるい」という声がありますが、実はお門違い。
目が悪い子がメガネをかけているのを「ずるい」というのと同じことなんです
また、ディスレクシアもLDも「成功体験を積み重ねること」が重要になります。
得意な分野や興味のある活動で自信をつけ、苦手な学習にも前向きに取り組めるようになるのが理想的。
そのためには、できたことを認め、努力を評価することを意識しましょう。
苦手なことがあっても、学習への意欲を維持し、自己肯定感を育てることにつながりますよ。

二次障害を防ぐためにも、子どものころから自信を育ててあげたいね!
\ 二次障害とは?/
まとめ
ディスレクシアとLDは、どちらも学習面での困難を指す言葉です。
LDは学習障害全般を指す包括的な概念であり、ディスレクシアはその中の読字障害という特定のタイプを指します。
つまり、ディスレクシアはLDの一種。
LDにはディスレクシアの他に、書字障害や算数障害なども含まれます。
ディスレクシアもLDも、適切な支援を受けることで、困難を抱えながらも着実に学習を進めることができます。
1人ひとりの特性に合わせた方法を見つけ、早期発見と早期支援を徹底しましょう。
学習面だけでなく自尊心を守り、その子らしい成長を支えたいですね。


















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